憧れの空間、工夫凝らして ドールハウスの世界を探検

 レースのカーテンや豪華な家具-。憧れの物語に出てくる夢の空間を再現できるドールハウスの世界。ドールハウス作家で、藤沢市出身の主婦・小川富美子さん(71)=東京都在住=に、ドールハウスの魅力を聞いた。

 欧州の貴族や、富裕層の間で女子教育の玩具として親しまれてきたドールハウス。現代も、英国や米国などを中心に愛好家が多く、美術工芸品として人気がある。

 「小さな家」といわれるドールハウスは、実物の12分の1が基本のサイズ。だが、小川さんが作るのは24分の1とさらに小さいサイズだ。「広い空間がない日本の家でもリビングなどに置いて楽しめるように」と、小川さんのこだわりが作品に反映されている。

 小さいころ、両親にデパートで買ってもらった木製の家具のおもちゃで遊ぶことが大好きだった小川さん。娘たちのために木製の家をデザインし、自分が遊んでいた思い出のおもちゃをプレゼントした。

 「今では孫たちも遊んでいるくらい木のおもちゃは丈夫です。とにかく、手作りが大好きなんです」と目を輝かす。趣味でレース編みや、日本人形作り、パッチワークなど、あらゆる手工芸に没頭してきた。

 「ドールハウスは、私の手仕事の集大成」。作品は「箱根ドールハウス美術館」にも展示され、デパートのイベントにも不定期に出展している。

 作品の発表の場として大切にしているのは、第1回から参加してきた「東京インターナショナルミニチュアショー」だ。ほかにも、世界的に有名な「シカゴミニチュアショー」にも2015年以降、毎年出展してきた。

 主に1900年代初頭のファッションが掲載された書籍や、アンティークの素材集などを参考に、ドールハウスの内装や人形を制作するのがお気に入りのスタイルだ。「英国の映画やドラマからもインスピレーションを受けたり、ショップの飾り付けからも着想を得ています」

 家の外観はどのようにするのか、間取りや屋根の色なども、一から自分で考える。家具などは海外の制作者から購入する場合もあるが、雑貨の多くは100円ショップなどで素材を購入し、接着剤を使用して制作するなど工夫を凝らしている。

 素材集をコピー機で縮小し、香水瓶のラベルに貼ったり、海外で手に入れたレースを使って本物そっくりのドレスを手作りしたりするなど、「ドールハウスは、自分が憧れる世界観をそのまま表現できるのが魅力です」と語る。

 一番難しいのは「自分の作りたい作品のイメージを持つこと」だ。どこにレースを配置して、暖炉の上にはどんな飾りを置くのか、壁紙はどんな柄を選ぶのか。「ドレスの長さが1センチでも長くなれば、実物とは違ってしまう。誰もが喜んでくれる作品になるためのセンスを磨くことが一番大変です」と話す。

 昨年、今までの自分の作品を集めた書籍「MINIATURE&DOLLHOUSE 小川富美子 ドールハウスの世界」(New York Art)を自費出版した。

 「国内ではまだなじみの薄いドールハウスですが、興味がある方がより楽しめるよう、私の作品集が少しでもお役にたてればうれしいです」と話している。【2018年2月25日紙面掲載】

小川さんが女性主人の家をイメージして制作したドールハウス。カーペットも手作り

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