11月3日と10日、AFCチャンピオンズリーグの決勝を戦う鹿島アントラーズ。
決勝の舞台で対戦するのは、イランのペルセポリスだ。
イランといえばFIFAランキングは現在30位。オーストラリア(42位)、日本(50位)を上回り、AFC加盟国でトップである。
サッカー、フットサルともにアジア最高峰の実力を持つ国として知られる一方、なかなかその“内情”が伝わってこない国でもある。
そのイランで、1部リーグ初の日本人としてプレーしている選手がいることをご存じだろうか。
杉田祐希也は1993年生まれの25歳。柏レイソルのアカデミーから仙台大学を経て、2013年にスペインへと渡り、ホベ・エスパニョールとエルクレスに所属。
特にスペイン2部のエルクレスでは印象的なプレーを見せ、あのスペイン代表DFジェラール・ピケから絶賛されたこともある攻撃的MFだ。
その後タイを経て、昨年スウェーデン2部のダルクルドへ移籍すると、22試合3ゴールを記録しチームの1部昇格に貢献。そんな彼がこの夏、新天地として選んだのがイランだった。
所属するトラクトル・サジはイラン1部リーグで現在暫定3位につける強豪で、今シーズンのACLにも出場。そのチームで杉田はここまで11試合中10試合に出場している。
移籍の経緯やイランサッカーの印象、鹿島と対戦するペルセポリスについても聞いてみた。
――今年途中までスウェーデン1部のダルクルドでプレーされていました。どういった流れでイラン行きが決まったのでしょうか?
7月中旬にイランからオファーが届きました。その当時ダルクルドのオーナーがチームから去り経済的に厳しい状況でした。そうしたなかイランから移籍金のかかるオファーが届き、チームとしてもお金がいるとのことで、スムーズに話が進みました。
――移籍はすぐに決断しましたか?契約期間は?
相当悩みましたが、1日で決めました。契約年数は2年です。
――日本人として初めてイランのトップリーグでプレーする選手になりました。杉田選手はタイでのプレー経験もありますが、同じAFC圏内でもイランサッカーのレベルやプレー環境はどうですか?
イランはフィジカルに優れたチームが多い印象です。どの選手も球際に激しく、戦える選手が多いですね。環境はタイよりもいいと思います。スタッフの数も多く、組織としてしっかりとオーガナイズされています。
――所属するトラクトル・サジはどんなチームですか?杉田選手はどのポジションで出場し、監督にはどんなことを言われていますか?
僕の所属するチームは今年からオーナーが代わり多くの選手を補強しました。ヨーロッパでプレーしていたイラン代表の第1、第2、第3キャプテンを獲得し、国内でも凄く注目されています。僕は主に左のウイングのポジションで起用され、どんどん仕掛けることを求められていますね。
――イランといえば、ペルセポリスがACL決勝に進出し、鹿島アントラーズと対戦します。リーグでの対戦はまだですが、彼らについて知っていることを教えてください。
ペルセポリスはイランでも最も人気のあるチームで、エステグラルとのテヘランダービーは10万人近い観客が入ります。今年は選手の獲得制限の制裁があったらしく、チームのスタッフいわく、12人しかいい選手がいないとのことです。実質、ベンチ1人で戦わなければならないと言っていました。
――イランはペルシャ語で文字も違います。英語があまり通じないとも聞きますが、普段の生活やチームメイトとのコミュニケーションはどうですか?
英語でやりとりをしていますが、英語はほとんど通じません。なので、簡単なペルシャ語を覚えてコミュニケーションをとったり、身振り手振りでなんとか伝えています。
――イランで生活していて一番驚いたことは何でしょう?
基本的にイランではYouTubeやFacebook、またクレジットカードも使えません。半ズボンで街中を歩くこともできないので、色々と大変ですね。
――最近の日本サッカーについてどんな印象を持っていますか?
Jリーグはアジアで1番だと思います。ヨーロッパと比較しても相当レベルの高いリーグだと思っています。
――イランでは日本のサッカーはどのように見られているんでしょうか?
日本でプレーしたいというイラン人選手もたくさんいますね。
――よく連絡を取り合う選手は誰ですか?どんなことを話すのでしょうか。
エルクレス時代のチームメイト、ガイ・アスリン(※バルサのカンテラ時代は「神童」と呼ばれた攻撃的MF)とは時々連絡します。この間ドリブルデザイナーの方の動画に出ていたので、連絡したら喜んでいました(笑)。
――エルクレス時代の活躍などから、杉田選手のことを知っている日本のサッカーファンも多いと思います。最後に今シーズンや将来的な目標をお願いします!
今シーズンはACL出場権が目標です。将来的には色んな国でプレーしたいです。Jリーグでもできれば最高ですね。
スペイン、スウェーデン、そしてイランと、今年のワールドカップに出場した国々で実績を残している杉田。
25歳と伸び盛りの彼は、現在海外でプレーしている日本人選手のなかでも要注目の一人である。