残り3戦

 急げ、急げ、頼む-。1点差を追う試合終盤、祈るような声援が画面から聞こえてくる。しかし相手も必死だ。体を張った守備で攻撃が寸断され、振り向きざまの強烈なシュートがゴールキーパーの好守に阻まれる。そして、試合終了の笛。今季18個目の黒星▲J1リーグ残留に向け、懸命の戦いを続ける本県のV・ファーレン長崎。〈残り4試合で3勝が必要〉と1日の紙面にあった。だが、昨日の鳥栖戦に敗れ、いよいよ後がなくなった▲数字の上では、自動降格圏を脱出する可能性をまだ残している。ただ、ここまで31試合戦って8勝のチームに残り3試合で3連勝を望み、なのに、競争相手には都合よく足踏みしてもらう計算は、どうにも虫がよすぎるようにも思われて▲だから細かな星勘定の行方は、もうスポーツ面に任せようと思う。過去に例のない混戦のJ1残留戦線。その渦中にV長崎がいることをシンプルに楽しみたい▲勝ちゲームの興奮も感動も、試合の大詰めで追いつかれ、突き放される失意もチームが連れてきてくれたこの舞台で味わえたこと。このままシーズンを終えてもV長崎は“最強の新参者”だ▲最後までフェアに、クリーンに、ハードに-その願いを込めて大声援で支えたい。きっと奇跡はその先に…あっ、また虫のいい計算を。(智)

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