ああ、こんなにも贅沢な布陣だったんだ、杉山清貴&オメガトライブを固めていたのは。幼き日、テレビやラジオから流れてくる彼らの楽曲に都会の風、そして洋楽のエッセンスを感じていたことははっきりと覚えているが、なるほど作詞は秋元康に康珍化。MCにさえ台本が用意されていたことがあったとか……。自然発生的バンドというよりもかなり練られた「プロジェクト」だったことを、今回初めて知った。そしてそのコンセプトの巧みさが、彼らのなかにジレンマをもたらしていたことも。
だからこそ、ファンにはしみじみうれしい本作だ。デビュー35周年を記念して開催された、日比谷野外音楽堂でのライブの模様を収録。オリジナルメンバーで再集結を果たし、“あの頃”よりもさらに成熟した大人の音を響かせてくれる。杉山の突き抜けるような歌声も、(もちろん)健在。むしろ今、再評価されているAORをど直球で投げ込まれ、期待をはるかに超える心地よさを堪能した。
DISC2では、アンコール後に杉山オメガのもう一人の立役者というべき林哲司が大きなバラの花束を抱えて登場する一幕も。その後、観客とともに行った記念撮影には杉山アマチュア時代のバンド「きゅうてぃぱんちょす」のメンバーだった千住明も舞台袖から現れた。そして2019年の年明け(2月)からは、全国ツアーを開始することも発表! なるほど、やりきった再結成ではなく、ここが彼らの新しいスタートラインなのだ。
(キングレコード・6296円+税)=玉木美企子