ベントレー 新型コンチネンタルGT&ベンテイガV8試乗|スポーツラグジュアリー極まるクーペとSUVをテスト!

ベントレー 新型コンチネンタルGT

100周年を目前に控えたベントレーの歴史をまずはおさらい

ベントレー 新型コンチネンタルGT

迫力のあるわがままサイズと、ふくよかな厚みを湛えたボディ、艶やかなボディカラー、本物感漂うラグジュアリーなインテリアなどなど、見るからに高級オーラを醸し出し、一般庶民にはとても高嶺の花の「ベントレー」。

いろいろな調査結果からみると、世の中的には「ベントレー」という名前はそこそこ知られていて、企業の経営者やリーダー的な人が好きそうなブランドという認識を持っている人が多いようです。しかし、ベントレーをよく知らない方のため、来年に迫ったブランド100周年を前に、少しおさらいをしましょう。

このところベントレーは販売台数を伸ばし、2017年には全世界で11089台を販売。現在は世界58か国203のディーラーがあり、そのうち日本には9つの販売店があります。日本では東日本大震災の後、大きく販売台数を減らしましたが、2016年には同社史上初のSUV「ベンテイガ」の導入などによって、2017年は418台を販売。そして2018年はそれを上回る予定とか。そして昨今のオーナー年齢層は50~54歳がボリュームゾーンで、以前より年齢が若返り傾向にあるそうです。

過去にはロールス・ロイスのサブブランド的な存在だった不遇の時代も

現在は順風満帆と思われるベントレーですが、同社の歴史はというと実は波乱万丈。1919年にベントレーモーターズ社が設立され、1921年に初めてのベントレー「3リッター」を製造。その後、1924年~30年までの7年間にル・マン24時間レースで5度の優勝を果たしその名が世の中に知れ渡ると共に、英国を代表する自動車メーカーと言われるようになりました。この頃が、かつてのベントレーが最も輝いていた時代です。しかし1931年にロールス・ロイスによって買収され、その後英国の重工業会社ヴィッカーズの傘下を経て1998年にVWグループに収まり現在に至ります。2003年に完全に分離するまでは、ロールス・ロイスのコンポーネンツを使ったスポーツブランド的な存在で、オリジナルのベントレーを作ることができなかった時代でした。

コンチネンタルGTの登場でベントレーブランドが奇跡の復活へ

ロールス・ロイスとお別れしたのち、4シータークーペの初代「コンチネンタルGT」が登場します。その後、2013年に2代目、2017年に3代目のコンチネンタルGTが登場し、日本では2018年に、新型のデリバリーが始まりました。初代にはロールス・ロイスのテイストが残っていたかもしれませんが、世代を追うごとに「クラフトマンシップ」「ドライビング」「デザイン」「パワー」「レーシング」というベントレーらしいキーワードが強く盛り込まれてきていると思います。

ベントレー 新型コンチネンタルGT

唯一無二なW12気筒とクラフトマンシップ溢れるインテリアに酔いしれる

というわけで新型「コンチネンタルGT」。

ひと言でいうと天然素材と最先端のテクノロジーの融合です。

エクステリアは、フロントのカーブやリアのタイヤハウス上のカーブなどが歴代のコンチネンタルGTと共通のデザイン。また、ボンネットを長く、ノーズを低くし、前輪を前方に135mm伸ばしたことで、さらに堂々としたシルエットになっています。

エンジンは635馬力、VW製の6リッター W12 TSIエンジンを搭載し、8速デュアルクラッチトランスミッションを採用。先代に比べてボディをアルミにするなどで80kgも軽量になっていますが、それでも車両重量は2トン超えの2244kg。しかし0-100km/hは、3.7秒で最高速は330km/hという迫力のある速さを誇ります。

いっぽうでクラフトマンシップへのこだわりが強いのもベントレー。インテリアに使用する本革はすべて南ドイツ産の牡牛のもの。牡牛は虫のいない標高の高い場所で、傷がつかないように育てられたもので、とりわけ上質なものが選ばれています。また、ステアリングに施されているステッチは、熟練した職人がマイフォークで縫っているそう。さらにインテリアに使われる天然木は10平方メートル分にも及びます。本革のシートの厚みに頼もしさを感じますが、ダイヤ型のステッチ「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」は、1つのダイヤ型が712個ものステッチで縫われています。厚みといえば2ドアのクーペなのでドアが大きく厚みがあるため、ドアの厚さ分の幅を考慮しないと駐車場などでドアが開かないとか、傷をつけてしまうということもあるかもしれません。

ベントレー 新型コンチネンタルGT
ベントレー 新型コンチネンタルGT

メーターパネルは液晶ディスプレイとなり、また、センターにある12.3インチのディスプレイは、フラットなウッドパネル、MMIディスプレイ、そして美しいアナログのダイヤル(外気温、コンパス、クロノメーター)と回転して3パターンになる演出も楽しいもの。特に移動中にアナログダイヤルにディスプレイを変えると、キラキラのコンパスがくるくる回る姿が美しいのです。ただし、エンタテイメント系は使い方に慣れないと少し使いにくいかもしれません。

また、暗い場所で車両に近づくと、ヘッドライトがだんだん明るくなり、ドライバーを出迎えてくれるなんて演出も。

ボディカラーは基本の17色に加えて、オプションを入れればなんと70色から選ぶことが可能なので、お気に入りの色が見つかりそうです。

サスペンションやエンジン、ギアボックスなどの設定を変えるは「ベントレー・ドライブ・ダイナミクス・コントロール」の仕事。と言ってもそもそも635馬力もあるので、たとえ「コンフォートモード」でも力強い走りです。ドライブモードは4つ。「コンフォートモード」「ベントレーモード」「スポーツモード」「カスタム」がありますが、ベントレーだけに「B」のマークの「ベントレーモード」を使いたくなりますが、このモードはまさにそんな心理を突いたかのようにバランスが良く、どこまでも気持ちよく走れる設定。ほかのモードも試みましたが、「Bモード」だとモード切り替えをしなくてもジェントルマンな走りを約束してくれます。2トン以上もの重さや全長&全幅共に大きいサイズなので気は使いますが、ハンドルさばきが軽やかで乗りにくくないのは「ベントレー・ダイナミック・ライド」や「エアサスペンション」「電動パワーアシストステアリング(EPAS)」、最新式の連続可変ダンピングコントロール、(CDC)など先進の車両制御のお陰でしょう。

しかし私が何より気に入ったのは車内の香りです。これは今まで取材しても何の香りかわからず、私としては革か接着剤の香りではないかと思うのですが「コンチネンタルGT」のこの気品漂う香りは、車内の香りをすべて吸い込みたくなるぐらい高貴な香りで、これだけでももっと乗りたい、運転したいという気分になってしまうのです。

ベントレー ベンテイガV8

頼もしいスタイリングと走り、そしてラグジュアリーな空間はまさに極上

そしてこの日の試乗はもう一台。

ベントレー初のラグジュアリーSUV「ベンテイガ」。

ベントレー ベンテイガV8

「どこから見てもベントレー」という頼もしいエクステリアデザインに、丸目4灯のLEDヘッドライトと大型のマトリクスグリルが印象的。そこに今回新しく加わったベンテイガのスポーティ担当「ベンテイガV8」です。

全長5148mm全幅1998mm全高1742mmとワイドサイズですが、4リッター V8ツインターボガソリンエンジンを搭載して550PS。0-100km/hは4.5秒、最高速は290km/hというなかなかの俊足なのに燃費がそれほど悪くないのは、8気筒のうち、必要に応じて半分の4気筒が休止モードになるという効果が大きいようです。しかもこれがあまりにもさりげなく切り替わるため、ほとんど気が付かないまま行われます。

そして2250kgの巨体をしっかり止めるブレーキはベントレー史上最大&最強のブレーキシステム「カーボンセラミックブレーキ」を搭載(オプション)。ほかにも「ベンテイガ」のセンターコンソールなどに使用したハイテク素材「ハイグロスカーボンファイバー」などを使ったインテリアも先進的。初採用といえばウッドとレザーを組み合わせたステアリングホイールは、ウッドの部分の仕上げを7種類から選択できるそう。

また、SUVだけに「ベントレーダイナミクスモード」によって8種類の中から走行モードを選択できます。またオフロードで活躍するのは「オールテレイン・スペシフィケーション」。オフロードや砂利道&草道など4つの悪路モードから選択可能。また、「マルチモード・サスペンション」によってこちらも4種類のモードを選択できるため、見掛け倒しではない真のSUVとしての威力も発揮してくれそう。ただし、残念ながら今回の試乗では試す機会があまりありませんでしたが。そしてさすがはVWグループ。ほかにもアダプティブクルーズコントロールやドライバーアシスト機能も充実。大きな車だけに自動パーキングも嬉しい装備です。

ベントレー ベンテイガV8

インフォテイメントシステムは8インチのタッチスクリーンタイプ。30か国語に対応し、日本語もあるのは違和感がありつつも瞬時に読めるのでやっぱり嬉しい。

ほかにもシートアレンジが4人~7人乗りまでできるし、世界初となるベントレー・ダイナミックライドを選べば、48ボルト駆動の電動式アクティブコントロール技術によって瞬時にロールを抑え、タイヤの接地性を最大限に上げることができます。確かにSUVなど背の高いクルマはタイヤや地面からドライバーが遠くなるため、クルマと地面が繋がっている感じがすると安心感がありますね。

ちなみに「ベンテイガV8」で物足りないという人には「ベンテイガW12」という選択肢もあります。「ベンテイガV8」の価格は1994万6000円、「ベンテイガW12」は2739万円ですが……。

やはり安いと言ってもこれは庶民にとっては夢のクルマ。

しかし、私が新しい2台のベントレーをドライブして思ったのは、ベントレーは背伸びして買う車ではないな、と。バブル当時、スーパーカー世代はフェラーリなど昔見た憧れのクルマをワンルームマンションに住みながら長期ローンで買うということもあったようですが、現代のベントレーは違います。ベントレーのために仕事を頑張るのではなく、仕事を頑張った結果でベントレーがついてきた、そんなクルマではないかと。

ところで来年のベントレー100周年には、なにかサプライズがあるのでしょうか?

筆者:吉田由美/写真:和田清志

ベントレー 新型コンチネンタルGT&ベンテイガ V8主要スペック

※希望小売価格以外のスペックは英国/米国での値となります

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