【素材技術で新市場に挑む シリーズ「EV化」企業編(8)】〈大同特殊鋼〉高機能磁性材料を拡充 ネオジム磁石、20年に売上高1.5倍へ

 大同特殊鋼(社長・石黒武氏)は高機能な磁性材料(磁石、軟磁性材料)などのラインアップを拡充し、自動車電動化の急速な深化、進展に対応しようとしている。

 まず、現行中計(2020中期経営計画)スタートとともに「電動化・自動運転プロジェクトチーム」を発足。従来からの自動車関係各社との太い関係性を生かしたマーケティング・営業活動を展開中だ。また、今春新設した「電子部材製品部」での部品ビジネス展開も視野に入れている。

 駆動用主機モータ、補機モータでは、重希土フリー・省重希土の高機能ネオジム磁石の開発を継続的に進め、ソリューション提案力を強化している。同時に、ニアネット焼結磁石(PLP磁石)の国内製造ライン増設、車載磁石の拡大を狙った北米など海外拠点設置の検討を進めている。20年までに売上高を現状比約1・5倍にすることを目指している。

 電動車では駆動用大電流の緻密な制御が必要となる。特に電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)では、EV走行の航続距離延長のためには不可欠。世界最高レベルの高透磁率・高磁束密度の軟磁性材料パーマロイ2種(MENPC―2S、MENPB―S)の開発に成功し、リチウムイオン電池の入出電流量を高精度に測定する電流センサなど、バッテリー周辺部品への適用を図っている。

 コンバータ内にはリチウムイオン電池電圧から昇圧する回路があり、鉄損が少ない軟磁性粉末がリアクトルに使用されている。今後、EVが普及すれば同粉末の需要も増大する。そうした状況に備え、現行中計期間中での軟磁性粉末製造ライン増設投資(15億円)を計画している。

 パワー半導体のSiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイド=シリコンに比べ電力損失が少なく高温高速動作性に優れる)化に伴い、PCU(パワー・コントロール・ユニット)に使用される電子部品にも高温対応が求められるが、同社ではこれに対し、高温でも安定した特性を発揮する電子部品材料の開発を進めている。

 EV化と同時に進む技術として自動運転があるが、その進化には光学カメラ、ミリ波レーダ、レーザーレーダなどのセンシング技術が必要。同社では、これらセンシング技術の高精度化に寄与する軟磁性周辺部品の開発・適用を進めている。

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