豪州SC第15戦:レッドブルvsペンスキーの王座争い加熱。審議応酬や場外乱闘も

 2018年シーズンも残すは2戦となったVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーは、隣国ニュージーランドに上陸。タイトル争いを展開するレッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)のSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB)と、DJRチーム・ペンスキーのスコット・マクローリン(フォード・ファルコンFG-X)がそれぞれ勝利を飾るも、ペナルティ審議、抗議、パルクフェルメでの場外乱闘など、タイトル獲得に向けファンも巻き込む加熱ぶりを見せた。

 11月3~4日にプケコへ・パーク・レースウェイで開催されたオークランド・スーパースプリントは、予選でシェルVパワー・レーシングのマクローリンが今季定位置となったポールポジションを獲得。そのままチャンピオン争いのライバルとなる、2016年王者を抑えレース序盤をリードしていく。

 しかし8周目に入ったところでティックフォード・レーシングのリッチー・スタナウェイ(フォード・ファルコンFG-X)がマクローリンのチームメイトであるファビアン・クルサード(フォード・ファルコンFG-X)をプッシングし、ウォールにクラッシュさせるフォード陣営の同士討ちが発生し、これにリー・ホールズワース(ホールデン・コモドアZB)も巻き込まれたためセーフティカー(SC)が出動することに。

 各車が一斉にピットへと向かうなか、後方に沈んだ予選ポジションを考えた戦略で1周目にストップを済ませていたジェームス・コートニー(ホールデン・コモドアZB)がコースにとどまり首位に浮上。そのウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッドのマシン背後に、タイトルコンテンダーのマクローリン、SVGの2台が並ぶ隊列となった。

 再三コートニーに仕掛けたマクローリンだがトラック上でオーバーテイクすることは叶わず、そのままラップ数を消化すると、最後のピットストップで逆転したペンスキーのエースが先頭へ。さらにRBRAのトリプルエイト・レースエンジニアリングも迅速なピット作業でSVGを送り出すと、元王者は4秒あったリードをみるみるコース上で挽回し残り10周の時点で強引なパッシングを決めトップへと浮上する。

 しかし、この際のオーバーテイクでマシンをぶつけ合う攻防を見せたSVGに対し、レーススチュワードは5秒のタイムペナルティ加算を宣告。これで追い込まれたRBRAの地元ニュージーランド人は、残るラップを驚異的なペースで周回してマージンを稼ぎ出すと、2位マクローリンに5.5秒差をつけトップチェッカー。ペナルティ消化でわずか0.5秒差という薄氷のタイム差で勝利を飾ってみせた。

 しかしこれで波乱が終わるかに見えたレースは、RBRAの最後のピットストップで「ピットアウト時に後輪がホイールスピンしていた」との抗議が寄せられ、レースダイレクターがビデオ審議を行う事態に。

 スポーティングレギュレーションでは「クルーの安全性を守るため、ピットボックスを離れる際のホイールスピンは禁止」と記されているVASC条項の記述に従い、各アングルの映像から検証を行ったスーパーカー・オーガニゼーションは、「後輪着地時点からタイヤは一回転していない」と結論付け、翌日の日曜午前におとがめなしの裁定を下した。

■パルクフェルメで一触即発!?

 この間、審議を待つパドックではレース進行に伴いパルクフェルメイン、暫定表彰式とスケジュールが進行していた。しかし、ここでも事件が勃発。マクローリンのフォードに並んでマシンを進めたSVGは運転席ギリギリに寄せて駐車し、ライバルがマシンから降りられないほどの間隔でストップ。レース後記者会見で舌戦を繰り広げる事態に発展する。

「それほど近いとは思っていなかった。勝って興奮していたし、ファンの声援に応えるためルーフに上がることしか考えていなかったんだ。残念だし、謝りたい」とSVG。

「彼らは2番手が精一杯だろうし、明日は間違いなく僕がレースで勝つことになる」とマクローリン。

 その言葉どおり、リベンジに燃えたマクローリンは日曜のレース2で首位を快走。終盤にはRBRAの現王者ジェイミー・ウインカップに執拗なアタックを受け続け、あらゆるディフェンス方法を駆使して応戦する状況となるも、首位を堅持。

 その後方3番手には、最初のピットストップで車高調整を行いポジションを落としていたSVGが猛チャージで迫ってきたこともあり、RBRAはチームオーダーを発令しウインカップは12秒後方の僚友にポジションを譲ることに。

 これでプレッシャーから解放されたマクローリンが復讐のトップチェッカー。前日2ポイント差だった選手権リードを14点にまで拡大し、初タイトルを懸け最終戦に臨むこととなった。

「今日のレースは本当に大変だった。僕らは昨日の仕打ちに応えなくてはならなかったし、実際こうして勝ったことでやり遂げたんだ」と、満足げに語ったマクローリン。

「彼らがチームオーダーを発令することを願っていたし、実際にそうなって少し安心した。それで解放されたからね。もし僕らが逆の立場でも同じことをしたと思う」

 一方、前日のパルクフェルメで“キワドイ駐車”を披露した2位SVGは「地元のニュージーランドでこれほどのブーイングを受けたのは初めて」だと明かした。

「誰もがソーシャルメディアの炎上は最悪だと教えてくれていたが、それを初体験した。それでも夜の間は(それらに)目を通すことなくベッドで休み、コースに来てからは誰もが僕とスコッティ(マクローリン)を応援してくれる姿を見て安心した」

 2018年のVASCシリーズは、11月24~25日の第16戦ニューキャッスル500でいよいよシーズンフィナーレとなり、タイトル決定の天王山を迎える。

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