米国のアニメはNYで進化した。    アニメはタイムカプセル! 上映会に行ってみよう

暗い室内で、1980年代製の映写機が16ミリフィルムを回す。ピンボケした数字のカウントダウンが終わると、牧歌的なBGMとともに、モノクロのキャラクターが、おどけた表情で歌い出した。観客の爆笑につられ、映写機の隣に立つトミー・ホゼ・スタタスさんも笑う。

クラシックアニメ映画の上映会「カートゥーンカーニバル」では、アニメ歴史家でフィルムコレクターのトミーさんが所有する、オリジナルフィルムが鑑賞できる。古い作品は20年代までさかのぼる。当時のアニメは黒インクで1枚1枚手描き。CGも特殊効果も、時には音声すらないが、今観てもなかなか笑える。

作品は1920〜40年代のものが中心で、この日はハロウィーンに合わせてホラー特集だった。目まぐるしく表情や動きが変わるキャラは観客を飽きさせない

無声作品ではピアニストのチャーリー・ジュドキンスさんがBGMを生演奏。当時の劇場同様、その時代の流行曲を選んでいるそうだ。

失われゆく過去の娯楽

現在29歳のトミーさんは、10代のころから趣味でアニメフィルムを収集。上映会を始めたのは9年前。

「子供のころは、VHSテープで古いアニメがたくさん売られていました」とトミーさん。「私の親の世代は古いアニメをテレビ放送で観ていた。でもネット中心の今は、自発的に検索してみようと思うか、上映会に足を運ばない限り、子供が目にする機会は減りましたよね」。

映写機も、すでに生産停止された希少品だ
仮装してBGMを弾くチャーリーさん

古いフィルムは所在不明なことが多い。それらを探し出すのもトミーさんの使命だ。

当時のアメリカを知る

大人になった今、改めてクラシックアニメを観ると、子供の目線とは異なる発見がたくさんある。

「職人技を楽しむ感覚に似ています。最初期(20年代前半)の作品はどこか不格好ですが、アニメーターが育ち、技術も発展するにつれ、動きや演出がどんどん進化していくのが面白い」

今となっては問題視される、過激な暴力描写や、人種や性別、職業などの差別的表現も少なくない。

トミー・ホゼ・スタタスさん アニメーション歴史家、コレクター。「カートゥーンカーニバル」はブッシュウィックの360メルローズ(360 Melrose St., Brooklyn, NY 11237)で、毎月開催。入場料10ドル。11月の開催予定については、下記ウェブサイト参照。 www.tommyjose.com

「アニメはタイムカプセルなんです」とトミーさん。「キャラクターの個性やセリフ回しに、当時の世間の風潮や、製作者たちの思いが込められている。過激な表現も、当時のポップカルチャーとして何が喜ばれていたかを反映しています」。

そうやって観ると、結構アニメって、奥が深い。

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