アニメーションの歴史は、1900年初頭にニューヨークで始まった。さまざまなアニメスタジオがマンハッタンに存在したが、中でも成功を収めたのが、フライシャースタジオ。アニメーターのマックス・フライシャーが15年に設立した。「ベティー・ブープ」や「ポパイ」「スーパーマン」など、700以上のアニメ作品を手掛け、全盛期はディズニーと肩を並べるスタジオといわれていた。
今回は、フライシャーの孫で同スタジオ(現在は版権管理が主な事業)の歴史家でもあるギニー・マホニーさんに、当時のアニメーション技術とキャラクター誕生の裏話を聞いた。
Q フライシャースタジオのすごいところは?
A マックス・フライシャーと弟のデーブが確立させたアニメーション技術「ロトスコープ」で知られています。 当時のキャラクターの動きは、生身の人間のものとは異なり、技術的にどこかぎこちなく、大げさなものでした。そこでマックスは、キャラクターの動きをしたデーブを撮影し、それを紙に投影して、動きをなぞりました。その結果、キャラクターの動きは非常になめらかで自然になったのです。
この技法を使って、当スタジオで最初に制作されたキャラクターが、道化師ココ(Koko the Crown)。当時はモノクロかつ無声だったので、声がなくてもコミカルで面白い、クラウンが採用されたんです。
漫画のキャラクターとしてすでに人気を博していた、ポパイやスーパーマンを初めてアニメ化したのも、当スタジオです。実は、ポパイが「ホウレンソウを食べると強くなる」という設定は、われわれが作ったアニメのオリジナルなんですよ!また恋敵のブルートは原作では数多い悪役の一人でしたが、アニメで準主役になっています。
Q キャラクターを作る際に意識したことは?
A それまでのアニメは農場や田舎で暮らす、動物などのキャラクターが一般的でしたが、マンハッタンにあった当スタジオは、物語の舞台を都会に置き、キャラクター像も、より人間に近いものを目指しました。演出や音楽には、ちょっとシュールな要素を加える試みを行っています。
都会的なキャラクターとして作り上げたオリジナルキャラが、ベティー・ブープ。彼女は米国アニメ史において、初めて登場した人間の女性キャラクターなんですよ。初登場時はナイトクラブで歌うシンガーでした。彼女の魅力は、自立したワーキングウーマンであること。当時の女性としては自由で先進的な服を着ていますし、職業も教師、レーシングカーのドライバー、飛行機のパイロットなど、当時の女性では珍しいものが多くありました。
Q 現代のフレイシャー・スタジオのミッションは?
A ベティーのスピリットを、今の世の中に伝え続けること。ベティーは独立した女性として、いつも人々を元気づけてくれます。そんなキャラクター像が、今の世の中でどのような意味を持つのか考えることで、ベティーが私たちにとって親しみ深くあり続けるのだと思います。