働き過ぎる人たち

 30年ほど前、転職情報誌の広告コピーにあった。〈突然ですが、仕事はおカネです。そうわりきると、とてもはりきる私は、かなりゲンキンです〉。ちゃんと給料をもらえば、いくらでも働きます。そんな宣言に読める▲時は過ぎ、「仕事はおカネ」と割り切って、張り切って、いくらでも働く時代では、もはやない。政府が過重労働の実態などをまとめた2018年版の白書からは「働き過ぎる人たち」のため息が漏れ聞こえるようでもある▲全国の小中学、高校の教職員3万5千人が回答した調査では、仕事上のストレスや悩みは「長時間勤務の多さ」がトップで「保護者・PTAへの対応」などが続く▲1日の平均勤務時間は11時間17分。連日3時間超の残業をしていることになる。副校長や教頭はもっと長くて、「過労死ライン」の残業月80時間までも上回る▲医療従事者のため息も深いらしい。医者が労災認定された理由の大半が長時間労働だった。勤務時間が終わっても、医者は診断書やカルテ、看護師は看護記録と、書類作りに追われている▲30年前の広告コピーとは逆のような、近年のサラリーマン川柳の秀作がある。〈ノー残業 言われなくても帰る部下〉。上司は苦笑い-という場面だが、皆がこうありたいと思わせる、ちょっと切ない一句でもある。(徹)

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