大都市対地方で議論ヤマ場 税制改正で神奈川も恩恵か

 2019年度税制改正に向け、大都市と地方の駆け引きが激化している。最大の焦点となる地方法人課税の格差是正を巡り、減収が避けられない東京都は猛反発。神奈川を含む「地方」側は恩恵が膨らむ見通しだが、議論の行方から目が離せない状況だ。「東京一極集中」の解消を目指す政府の思惑も絡み、年末の与党税制改正大綱決定を見据えた攻防はヤマ場を迎えている。

 「多くの地方自治体はぜひお願いしたいと思っているが、東京都など大都市圏からは慎重な意見が出ている」。9日午前、自民党本部で開かれた税制改正のヒアリングで、全国知事会側は微妙な言い回しで税収格差の是正を求めた。

 地方税収は全体で約38兆6千億円(16年度決算)で、人口1人当たりの都道府県格差は最大2・4倍。このうち法人税収(事業税・住民税)は約6兆3千億円で、トップの東京と最下位の奈良県では6倍以上の格差が開いている。

 政府は大都市に集中する法人事業税の一部を国が集め、地方に再配分する格差是正策を検討しており、年末の19年度税制改正で最終決定する方針。ヒアリングで党総務部会長の赤間二郎氏(衆院14区)は「皆さんとしっかり連携しながら取り組みたい」と強調した。

 ただ、今後の議論は一筋縄では行きそうもない。知事会が神経をとがらせるように、再配分で大幅な減収が予想される東京都が政府方針に猛反発しているからだ。

 「あたかも東京一極集中VS地方創生といった位置付けになっている」。同日の全国知事会議で小池百合子都知事は語気を強め、「日本が持続的成長を遂げるためには、東京と地方が対立するのではなく、互いに高め合って支え合う共存共栄が欠かせない」と訴えた。

 しかし、大阪府や愛知県が同調したものの、他の道府県で都に追随する動きはほとんどない。「日本全体を考えると一定の格差是正は仕方ない」(富山県)との意見が大半で、神奈川も同様の考えを示している。

 神奈川県によると、現在の法人事業税の是正策では、16年度決算で約990億円を国に収める一方、再配分は約1170億円。現行の配分基準は人口と従業員数で、今回議論している新たな是正策では人口だけにする方向も示された。「神奈川都民」とも称される県外で働く県民が多い神奈川は、より恩恵を受けられる可能性が高いという。

 とはいえ、限られた税財源を奪い合う格差是正策の改善を求める声も少なくない。黒岩祐治知事は6日の会見で「黒字は東京都だけで、神奈川を含め全部の道府県は赤字に苦しんでいる」とした上で、こう指摘した。「現実問題として、税財政構造のいびつな形を抜本的に見直すことを求めていく」

地方6団体などが出席した自民党のヒアリングであいさつする赤間氏=9日午前、東京・永田町の党本部

© 株式会社神奈川新聞社