小中学校運動会の熱中症対応、分かれる 指針策定の大和市

 大和市内の市立小中学校で本年度の運動会が10月末までに全て終了した。猛暑による児童生徒の熱中症を防ぐため、市教育委員会は7月末に屋外活動の可否を判断するガイドラインを策定して各校に通知した。しかし、厳しい残暑が予想された9月に運動会を予定していた小中学校24校のうち、10月に実施日を繰り下げたのは小学校5校と少なく、対応が分かれる形となった。

 市教委によると、ガイドラインは7月に愛知県内で校外学習後の児童が熱中症で死亡した事故を受けて検討。環境省が公表している「暑さ指数」に基づき気温や湿度などから「体育などの運動の中止」など5段階の対応基準を示した。

 従来、市内の運動会は9月中~下旬の実施が多い。本年度も9月15日に中学校7校、同22日に小学校4校、同29日に小学校13校が当初計画していた。

 このうち、ガイドラインを考慮して日程を変更したのは小学校6校。この6校うち、平均気温が下がる10月に繰り下げたのは5校で、内訳は10月13日1校、同20日1校、同27日3校(雨で28、29日に延期)だった。残る1校は1週間繰り下げて9月中に実施した。

 市南部の渋谷小(同市渋谷)は9月29日から10月27日に変更。さらに当日は雨天のため翌28日に延期した。低学年児童の寒さ対策として、PTA競技を取りやめるなどプログラムを短縮して臨んだという。

 同校の大塚潤子校長は「今夏の暑さは本当に厳しかった。7月中はほとんど屋外での活動ができなかった。運動会の準備は実施日の約1カ月前から始まるので、練習日の確保を考慮すれば日程変更をせざるを得なかった。教職員とPTA役員に相談し、10月の土曜日に当初計画していた授業参観日と入れ替えた」と話している。

 迎えた運動会当日。午前中は雲が多かったものの、昼食時の気温は20度前後。保護者からは「やはり運動会は10月が最適。練習時間が十分に取れたみたいで、団体演技の仕上がりは良かった」などと評価する声が聞かれた。

 一方でガイドライン提示後も、9月の当初予定を変更しなかった小中学校は18校に上った。該当する学校の校長らは「変更したくても10月に入ると週末は地域のイベントが多くて直前の調整が難しかった」「水分補給やテントを用意するなど熱中症対策は講じたが、練習を中止した日もあった。来年度は春開催を検討中」などと振り返った。

 市教委指導室は「今夏、運動会の練習後に熱中症の疑いで救急搬送された事例があった。子どもたちの安全を最優先に判断する思いはどの学校も同じはず。運動会の反省会で検証し、来年度の計画に生かしてほしい」と話している。

◆大和市の熱中症予防運動指針(ガイドライン)

 気温、湿度、輻射(ふくしゃ)熱から算出する指数。気温では35度以上は危険度が最も高く運動は原則中止。31~35度は激しい運動を中止し、気温上昇が予想される場合は体育を朝に行うなど具体的な対応を列挙。活動前だけでなく機器による計測を10~30分ごとに継続するとしている。

熱中症対策で約1カ月繰り下げて実施した大和市立渋谷小学校の運動会=10月28日

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