ザックの良し悪しはどこで判断する?
「良いザック」を定義することは難しいですが、ザックを評価する大きくポイントは“背負い心地”と“使い勝手”の2つ。しかし、「なんとなくイメージはできるけど、具体的にはどういうことか分からない・・・」なんてこともしばしば耳にします。
では、実際に高評価を受けているザックにはどんな特徴があるのでしょうか?
そこで今回、多くの登山者から高評価を得ている老舗ザックメーカー『グレゴリー』が主催するイベントに、YAMA HACK編集部員Nが参加して人気の秘密を探ってきました。
グレゴリーのザックを分析し、どんな機能が“背負い心地”と“使い勝手”に影響するのかレビューしていますので、ザック選びの参考にしてください!
今回使用したのは『スタウト30』というモデル。30L・35L・45Lの展開がある中型のバックパックです。
レディースモデルは『アンバー』。基本設計は同様に、スタウトに比べて一回り小さく作られています。
商品名:STOUT 30(スタウト30)
販売価格:19,440円(税込)
容量:30L
重量:1,060g
最大積載量:14kg
サイズ:H58×W30×D13cm(目安)
素材(本体):200D×900Dポリエステル&210Dポリエステル
カラー:コールグレー/ネイビーブルー
付属品:レインカバー
実際に使って感じた「使い心地」
歩いたのは富士河口湖近くにある「足和田山」のハイキングコース。夏山縦走から冬のバリエーションルートまでこなす編集部員Nが感じた「スタウト30」のリアルな感想をお伝えします!
「背負い心地の良さ」の正体とは
編集部員N
本当にぴったりとフィットする。重さが腰と肩にうまく分散しているので、荷物を背負うのがとても楽!
バックパネルを調整して背負ってみると、たしかに背中にフィットしている感覚があり、軽く走ってみてもザックがブレません。
ザックが体に合わず、歩くたびに左右にブレている状況では、体勢も乱れて体力の消耗に繋がります。しっかりと体にフィットすることで、重心が安定し、歩行が楽になるんです。
編集部員N
たしかに背中も蒸れにくい。いつも背中に感じるあの“ジトジト”した嫌な感じがまるでない!
約3時間の山行でしたが、背中部分が蒸れることはなく、ベースレイヤーが汗で濡れることはありませんでした。
登山で注意しなければならないのが低体温の原因である「汗冷え」。高い通気性を確保することで低体温のリスクを回避してくれます。背中の蒸れを解消することで、汗冷えすることがなくなり、快適性が向上するんです。
「使い勝手が良い」と思えたこと
編集部員N
収納部分が多くて荷物の整理がしやすいので、必要な物がすぐに取り出せる。ザックに荷物が入ることは当たり前だけど、出し入れがここまでスムーズなのは初めて。
スタウト30は収納部分が多く、サイドポケットに水分・背面にはクッション・雨蓋にカメラなど使い分けがしやすいです。このような収納は珍しくありませんが、「ドローコード」や「指をひっかけやすい持ち手」などの細かい“作りこみ”があることで、動作スピードが格段にあがります。各収納にアクセスしやすくすることで、荷物の出し入れがスムーズになり、ストレスを感じさせないのです。
ここには注意
イベントでは「どのベルトを引っ張れば調整できるのか分からない」と、やや使い方に苦戦する女性もいました。調整機能や多彩な収納など、ザックとしての“機能”が多い分、最初に正しい使い方を習得する必要があります。
難しいわけではないので、使い方さえ覚えてしまえば、荷物の量が変化した時にも対応可能です。
スタウトの作りを徹底分析
スタウトの使いやすさを分析するため、編集部員Nが普段使用しているザック『モンベル/ゼロポイント グラナイトパック30(旧型)』と比較しながら各部をチェックしていきます。
どちらも日帰り登山に適した30Lですので、どこに違いがあるのか見ていきましょう!
ザック選びの基本はこちらをチェック▼
登山入門|ぴったりサイズで快適!プロに聞いた登山用ザックのサイズ選び
登山で使うザック。どの状態が「自分に合ったサイズ」なのかわかりますか?どれを背負っても一緒だと思っていませんか?実は自分にあってるかあ...
チェックポイント①背面長の調整機能
背面長には大きく2種類のタイプがあります。グラナイトパックのような固定式とスタウトのような調整式。
固定式の場合、自分に適したサイズを選ぶには試着が必要です。背面長は毎回調整するものではないので、ジャストサイズが見つかればOK。
スタウトの場合は、背面長の長さをマジックテープで簡単に長さを変更できます。使いながら微調整することで、より確実に体型にフィットさせることが可能。
また、ネット通販など、試着ができない場合でもサイズに対する不安がありません。
チェックポイント②バックパネルの加工
グラナイトパックはソフトなあたり心地のウレタン素材がブロック状に並んだベーシックな構造。
ウレタンは汗を吸収しやすく乾きにくいデメリットがありますが、厚みがあるとクッション性が高く、荷物の負担を和らげてくれます。
スタウトはバックパネルにメッシュ素材を使用し、クッション性のある細かな凹凸が並んでいるフラットな構造。
ウレタン素材に比べるとクッション性はやや劣りますが、背中全体にフィットする感覚があり、しっかりと通気性も確保されています。
クッション性を求めるならベーシックな構造。通気性とフィット感を求めるならフラットな構造。それぞれにメリット・デメリットがあるので、求める性能で選びましょう。
チェックポイント③収納力(拡張性)
実は、ザックの容量(リッター表示)には共通の規格はありません。入る荷物の目安は同じですが、収納機能の有無などで、拡張性は異なります。
スタウトの場合、フロントには伸縮素材のポケットがあり、軽めのアイテムを収納することが可能。
スタウトのウエストベルトには、左右にポケットもあります。ザックを背負った状態で手が届くの収納なのであると便利です。
ですが、このような収納機能を極力減らすことによってコンパクト化や軽量化を図っているザックもありますので、目的を考えて判断しましょう。
チェックポイント④ドローコードの有無と細かい仕様
一般的にメインの収納部分にはドローコードを採用しているザックが多いです。こちらは開閉がしやすいかどうかのチェックします。
グレゴリーのドローコードシステムは引っ張るだけで開口部の開閉ができ、動作が一瞬で完了するのでかなり便利です!
雨蓋のジップなどの細かい部分にも注目。こちらは「つまむ方が持ちやすい」など個人差はありますが、冬場に手袋をはめた状態では、持ち手がループ状になっている方が指をひっかけやすいです。
チェックポイント⑤サイドポケットの深さ
スタウトはのサイドポケットはペットボトルがすっぽりと収まる深さで、グラナイトパックはペットボトルが半分程度の深さ。
サイドポケットの用途は水筒を収納するだけではありませんので、一概に「深い方がいい」ということはありませんが、こちらも注目するべきポイントです。
ザックは細かい部分に注目しよう!
ザックの作りを細かく分析した結果、スタウトの“背負い心地の良さ”と“使い勝手の良さ”を実現させているのは「構造」と「細部までの作りこみ」だと判明しました。
フィット感・軽さ・見た目など、何を重要視するのかでザックの選択肢は変わりますが、ザック選びの際には、容量とサイズ以外に、以下のポイントにも注目してみてください!