21年度に本格稼働へ シェアサイクル 川崎市が登戸と殿町で実証実験

 観光施設間の回遊性や交通利便性の向上を狙い、川崎市はシェアサイクルの導入に向けた実証実験に乗り出す。「登戸・向ケ丘遊園両駅周辺」(多摩区)と、国際戦略拠点「キングスカイフロント」が立地する「殿町・大師河原」(川崎区)の両地区が対象。来年3月から2年間、経済効果や放置自転車対策への影響なども検証し、2021年度の本格稼働を目指す。

 シェアサイクルは複数のサイクルポートを設け、ICカードや専用アプリで利用する仕組み。貸し出しと返却はどのポートでも行える。

 観光客のアクセス手段向上や商業活性化、放置自転車対策といった観点から、市は今年3月に策定した「市自転車利用基本方針」にシェアサイクルの導入方針を明記。土地の高低差や自転車通行空間の整備状況、駅前駐輪場の利用状況などを踏まえ、2カ所を実験エリアに選定した。

 運営は民間事業者に委託し、市はポートの設置用地を提供する。ポートの候補地は登戸地区で19カ所、殿町地区で14カ所が挙げられており、自転車は230~250台規模を想定。事故への備えとして事業者には保険加入を義務付ける。

 対象となる登戸地区は、登戸駅から半径1500メートルのエリアで検証する。生田緑地や藤子・F・不二雄ミュージアムなどの施設が点在するものの、「回遊性がなく、施設を訪れた人がそのまま駅に戻ってしまうという点で課題があった」と市自転車利活用推進室。同駅や小田急小田原線向ケ丘遊園駅周辺の商店街への誘客効果にも期待を寄せる。

 一方、研究機関が集積する殿町地区は、京急大師線小島新田駅から半径1キロが実験エリア。同室は「企業側からは敷地内にポートを設置してもいいとの声もいただいている。昼食時の利用や気分転換のため、多摩川沿いを走る機会もあるのでは」と定着に期待を寄せる。

 シェアサイクルを巡っては、今年6月に閣議決定された国の「自転車活用推進計画」の中でも普及拡大が盛り込まれ、全国的に導入が加速。14年度から本格実施している横浜市では、約650台が用意され、貸し出し・返却拠点は73カ所に上る。

 川崎市は今月中にも事業者の公募を始め、学識経験者の意見を踏まえて来年1月にも事業者を選定。最終的な配置計画を決める。同室は「町づくりの観点から、事業者には多摩川サイクリングロードの活用なども提案してもらいたい。効果を検証し、全市にも広げていきたい」としている。

横浜市で導入されているシェアサイクル。川崎市でも定着なるか

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