発展続け次代へ 伊勢原手作り甲冑隊が発足15周年

 戦国武将・太田道灌ゆかりの伊勢原市で活動する愛好家グループ「伊勢原手作り甲冑(かっちゅう)隊」が、発足15周年を迎えた。隊員が厚紙や組みひもで手作りした精巧な甲冑をまとい、市内外のイベントで伊勢原の魅力や道灌を紹介している。メンバーは発足時の5倍近くに増え、隊長の若林紘一さん(78)は「当初はこれほど成長するとは思っていなかった。地域の皆さんの支援と隊員たちの思いがここまで大きくした」と感慨深げだ。 

 甲冑隊は2003年、若林さんが小田原市内の甲冑教室に通ったことを機に発足した。厚紙を曲げて硬化剤を施し、ペンキを重ね塗りして光沢のあるよろいを仕上げる。甲冑作りを街おこしにつなげようと、有志5人が技術を習い、伊勢原市の公民館で教室を開いた。

 同年10月に卒業生ら24人で甲冑隊を結成、市内の観光イベント「伊勢原観光道灌まつり」のパレードに参加した。若林さんは「観衆から声が掛かり、手を振ってもらえたことがうれしかった」と振り返る。隊員は増え続け、現在は高校生から93歳までの男女計115人。多くが会社員で、元警察官、主婦、元秦野市職員など多彩な顔がそろう。

 最初は道灌まつりや市内の老人ホームに出演した。その後、全国から声が掛かり、市民から「伊勢原の観光大使のよう」と呼ばれるようにもなった。現在は年間約40件のイベントに招かれる。今年4月は滋賀県草津市の草津宿場まつり、10月には東京都荒川区の日暮里道灌まつりでパレードや寸劇を披露した。3年前からは道灌の大河ドラマ化に向けた署名活動も始め、18万5千筆を集めている。

 伊勢原市民文化会館では今月6日、発足15周年記念の催しが開かれた。約390人を前に、甲冑隊が道灌や相模国ゆかりの武将に扮(ふん)した寸劇で道灌の生涯を紹介。隊員が「義を重んじ、名誉を尊重する」といった侍の精神を外国人観光客に英語で紹介するスピーチも初披露した。出陣する武士たちをユーモラスに描いた寸劇も拍手を誘った。

 メンバーの平均年齢は75歳。2着目の甲冑を制作中の武藤俊男さん(71)は「お客さんに喜んでもらえたことが財産。若い人の育成を目指し、甲冑隊を次の世代につなげたい」と話す。若林さんは「まだまだ若い人に負けていられない。今後も他県の自治体と協力し、地域の発展に寄与していきたい」と甲冑を前に意気軒高だ。

甲冑隊員の寸劇も披露された15周年記念祭=6日、伊勢原市民文化会館

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