三浦の漁業、元気に 26歳の漁師「盛り上げたい」

 三浦市晴海町に住む宮川樹さん(26)がこの秋、漁師として独り立ちした。漁師一家に育ち、父に憧れ、その背中を追い掛け、目標だった30歳までに自分の船を持った。漁師の高齢化が進み、担い手も減る中、「腕一本で稼ぐことができる商売」に魅了された宮川さんは「自分が稼ぐ姿を見せることで、若い漁師を増やし、三浦の漁業を盛り上げたい」と意気込んでいる。

 4日。宮川さんは三崎港で、「第五君栄丸」をお披露目した。全長約12メートル、重さ約4・6トン。千葉県の漁師から購入し、仲間と塗装し直した。船名は、宮川家の漁船「君栄丸」の5隻目を表す。

 約30人がお祝いに駆け付けた。宮川さんは父親の元彦さん(55)とともに船を出し、友人らを乗せて近くを航行。「ここからがスタート」と表情を引き締めた。

 4代続く漁師一家で育った。物心ついた頃には、漁師になることを夢見ていた。「雨の中、雨がっぱを着て、漁をするおやじを『格好いい』と思った」

 職業訓練校卒業後、17歳で憧れの職業に就いた。キンメダイなどを釣っていた父親は7年ほど前から、引き網でシラスを取るようになった。ただ「自分は網よりも釣りが好き」。地元のキンメダイ漁船や静岡県伊東市のサバ漁船に乗り込み、漁師としての経験を重ねた。宮川さんが8年修業した地元の「亀吉丸」船頭・石渡美根和さん(68)は「チャレンジ精神が旺盛でガッツがある」と評する。

 「自分の腕一本で稼ぎたい。やればやるほど稼ぎにつながる」。目標を30歳までの独立と掲げた。運転資金をため、「自分と同じぐらいの年齢」(宮川さん)の中古船を手に入れた。

 漁業が主要産業の一つの三浦でも、漁師の担い手不足や高齢化は深刻だ。市水産課によると、1988年に約1700人だった漁業就業者は2013年に約700人まで減少。65歳以上が占める割合も13年で41・2%と過半近くになり、全国平均(35・2%)と比べても高かった。

 市内で珍しくなった独り立ちに、地元の喜びや期待も大きい。みうら漁協の鈴木清代表理事組合長は「若い力で三浦の漁業を盛り上げてほしい」と願い、元彦さんは「三崎の漁業を背負っていってほしい」と息子に将来を託す。

 宮川さんは当面1人で、相模湾や伊豆諸島を漁場にキンメダイ漁をメインに操業する。「ゆくゆくは若い漁師を自分の船に乗せ、経験を積ませ、どんどん独立させたい」と力を込めた。

「第五君栄丸」を前に、「三浦の漁業を盛り上げたい」と意気込む宮川さん=4日、三崎港

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