『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』 『レオン』思わせるおじさんと少女の逃亡劇

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 アメリカとメキシコの国境地帯を舞台に、麻薬戦争の最前線を臨場感たっぷりにあぶり出した社会派アクション映画の続編だ。とはいえ、主要人物2人=ベニチオ・デル・トロ演じる元検事の暗殺者とジョシュ・ブローリンのCIA捜査官(とその同僚)が被っているだけで、ほぼ別モノと言っていい。

 『ブレードランナー2049』『複製された男』の鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督した前作は、社会派要素が強かった。素人同然の女性FBI捜査官(今回は登場しない)を狂言回しに、観客が彼女の視点を通して麻薬戦争の実態を体感する作りになっていたから。それに対して、今回は『レオン』を思わせるおじさんと少女の逃亡劇である。

 アメリカ政府の命を受けたブローリンが、デル・トロを使って麻薬カルテル間の内戦を誘発しようと麻薬王の娘を誘拐するが、状況が変わり、デル・トロはその娘を連れて…。もちろん麻薬や移民問題など社会派要素はあるものの、見どころは逃亡のスリルと二人の関係性。どちらも、どこへ向かうのか分からない迷宮のような奇妙な緊張感に満ちているのだ。

 さらに言えば、「暗殺者の映画」としても『レオン』に通じる本作。デル・トロがレオンとはまた違う形で自らのスキルを伝授することを示唆したラストからは、シリーズ化のにおいがプンプン。別モノとはいえ、これはこれで十分面白いだけに、期待したい。★★★★☆(外山真也)

監督:ステファノ・ソッリマ

脚本:テイラー・シェリダン

出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー

11月16日(金)から全国公開

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