【ULハイク】設営1分!ストックシェルターで叶える『住』の軽量化テクニック 荷物の軽量化・UL化は、我々ハイカーにとって重要なテーマのひとつ。 特に「衣食住」を担いで入山するお泊りハイク時はなおさら。 山の大小や季節に合わせた持参ギアの厳選、それらの軽量化など、ハイカー各自の経験と工夫の見せどころ。 中でも「住」は大幅な軽量化が可能です。 今回は筆者オススメの超軽量シェルターを活用した寝泊りのテクニックをご紹介します!

UL化に大きく貢献する軽量テント

荷物の軽量化を進める上で、特に大幅な軽量が可能なのが「ザック」と「テント」。 今回は「住」である「テント」に着目していきます。いまや軽量テントのガレージブランドは世界中に数多く存在し、デザインや機能、使い勝手もさまざま。 昨今は、「Locus Gear」の Khufu (クフ) などに代表されるストック1本で設営できるフロアレスの「モノポールシェルター」が人気です。

ほかにも「Six Moon Designs」「Big Sky International」「Tarp Tent」「YAMA Mountain Gear」など、各社からアイデアと工夫を凝らした軽量テント/シェルターが販売されています。 特徴として、その多くはフロアレスでストック1本で設営できることですが、一方で 120~130cm程度の長めのストックが必要だったり、ペグ固定が6~8本と、快適性と耐風性を上げるためには仕方のない事とはいえ、それなりの設営スペースと手間が必要です。

軽い!速い!簡単!ストックシェルター

そこで今回筆者が紹介するのは、快適性を削ぎ落とし携行性・スピード設営に特化した超軽量シェルター、「ストックシェルター」です。 実はこれ、国内最高峰の山岳耐久レース「TJAR (トランスジャパンアルプスレース)」の多くの選手も使用しているスグレモノなんです。 上記フォトからもわかる通り、PROモデルの本体重量はわずか175g、しかもコンパクトで設営が超簡単。 前述のモノポールシェルター系がおおよそ400g弱のため、その軽さは際立ちます。 かくいう筆者も2011年からテント代わりに積極活用しています。

メーカーは、信州トレイルマウンテンヘリテイジの2社があり、ヘリテイジの2018年最新モデルはトレイルシェルターと名称変更され、ベンチレーションが付き結露対策が取られています。 反面、総重量は280gとなっていますので、その選択は何を求めるかによるでしょう。 とは言え、非常に軽いことに変わりはありません。

少々ストイックに感じるかもしれませんが…

快適性よりとにかく軽量化を重視したいULハイカーやファストパッカー

設営に手間を掛けたくない人

省スペースで設営できる幕体が欲しい人

は、ぜひ参考にしてみてください。
さて、それでは早速シェルター詳細について見ていきましょう!

ストックシェルターの4つのメリット

メーカーやモデルが異なっても特徴や寸法、設営方法などに差異はないため、本記事では、ストックシェルター共通の内容について説明します。

①とにかく軽い!

やはりなんと言ってもその軽さです。「PRO」モデルは本体重量175g。 ペグやスタッフサック込みで200g。筆者保有のものは7年前の旧モデルですが、それでも総重量で実測約245gと超軽量。(トレイルシェルターは280g)

②めちゃくちゃ小さい!

収納時の大きさは、約17cmx8cm。 標準的な500mLペットボトルのサイズが約20cmx6cmのため、相当な小ささであることがわかります。 常にザックに放り込んでおいても気にならないサイズです。

③設営が超簡単!

なんと、ストック2本+ペグ2本で設営が完了! しかも、必要な設営時間はわずか1分です。 耐風性や快適性を上げるひと手間 (フットプリント挿入+左右のペグダウン) を入れるともう少し掛かりますが、それでも2分ほどで完了します。

④ (オマケ) 目立つ!人気者になれる…かも?

筆者のスラム化したシェルター内

テント場では、そのコンパクトさがとても目を引くようで、いろいろなハイカーさんが集まってきてくれ、期せずして人気者に。 そのため、シェルター内をきれいに整頓しておくことをお奨めします。 筆者のように経験を重ねると、散らかったシェルター内をお見せするのもすでに慣れっこです。

ここはご承知を! ストックシェルターのデメリットは?

①居住空間が狭い!

(トレイルシェルター)

最大寸法が256cmx105cmあり、寝るのには充分なスペースが確保されています。 しかしこれはひし形の頂点部寸法であり、且つ高さ=90cmとヘッドクリアランスが確保できません。 よって、着替えは窮屈煮炊きは出来ない座って過ごすことも困難です。

対策:割り切って寝るだけにする!
着替えはWCなどで行い、煮炊きはシェルターの外で。お酒なども外で楽しみましょう。 ※そもそも煮炊きは外でが基本。

②完全防水ではない!

あくまで緊急時ビバーク用・仮眠用としての設計のため、耐水圧1,000mmの防水生地が使用されていますが、縫製ラインやファスナー部などの防水処理はされておらず雨漏りします。

対策:好天予報のときに使用しよう!
縫製ラインはシームシーリング出来るので、自分でやっておいても良いでしょう。(但し、重量は微増) ただ、悪天候予報のときは、そもそもハイクを控えた方が良いですし、不幸にも天気が崩れてしまったときは、安全を考慮し、小屋泊に切り替えるなど臨機応変な対応が好ましいです。

③前室がない!

物を置く前室スペースはありません。これは靴も含めてシェルター内にすべて持ち込む必要があるということです。

対策:荷物をコンパクト化し、少しでもスペース確保に努めよう!
自身の持ち物すべてをシェルター内にしまう必要があるため、荷物全体のコンパクト化が必要となります。 また、登山靴/トレランシューズはビニール袋に入れ、必ずシェルター内にしまってから寝ましょう。 予想外の雨や朝露でびしょ濡れになると大変です。

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④結露しやすい!

2018年最新モデルにはベンチレーションが付き改善されていますが、基本的に空間が狭いため、結露しやすいです。

対策1):こまめに拭けるよう吸水性の高いクロスを持参しよう!
筆者は結露をさほど気にしていませんが、クロスがあると便利です。

対策2):寝袋に防水対策をしよう!
足元は常にシェルター内壁と触れています。 また結露が溜まり、風が吹いて幕体が揺さぶられると室内に小雨が降ります。 寝袋が濡れないよう、シュラフカバーやViviなどで対策をしましょう。

対策3):ファスナーを少し開けておこう!
現行モデルならダブルスライダーになっているため、上下を少し開けておくことで換気の助けになります。

でも、デメリットは実はメリット?!

シェルターのデメリットをいくつか紹介しましたが、これはあくまで一般的に感じるだろうと思われることを列挙したまで。筆者自身は、実はまったくデメリットと感じていません。 逆に、ここまで携行性とスピード設営重視のミニマム仕様に特化してくれたことに感謝しています。 後は自分がどれだけ「重量」と「嵩」を許容し、「快適化」を求めるかの「足し算」ですので、いわばオプション追加を自分で選べカスタマイズできるのです。本当に優れたギアだというのが本音です。

さて、ここまでで、ある程度ストックシェルターがどんなものかイメージできたと思います。 それでは実際の活用シーンを確認していきましょう!

驚くほど簡単! シェルターの設営手順

ミニマム設営方法 (筆者式)

ミニマム設営に必要なものはこれですべて

それでは早速シェルタ-の設営手順を見ていきましょう。

ペグ収納袋も入っているため、紛失注意

①スタッフサックから出して広げる

風があってもどちらか一箇所をペグダウンすればやり易い

②上下をペグダウンする

シェルター両サイドの固定用アイレットにストック先端をセットする
シェルター上部のグリップケースにストックグリップを差し込み110cmに伸ばす

③110cmのストックをセットする

④あっという間に設営完了!

尚、メーカーサイトでは②③の手順が逆ですが、風のある日は筆者式の方が設営しやすくお薦めです。

耐風性が欲しい場合は忘れずに

⑤両サイドをペグダウンする

⑥シェルター内の両サイドの紐とストックを固定し完了!

すべてが至って簡単です。 これならツェルトなどの設営の際に必要な細引き技術と知識がなくても設営できますね。

尚、ストックシェルターの「スピード設営」という良さをスポイルしないよう、筆者は強風時以外サイドのペグダウンは行いません。 但し、状況次第ですので、強風時や安心感を求める場合はペグダウンしましょう。

快適化したい場合は+αの改良アイデア

フットプリント(グラウンドシート)

テント代わりに活用する場合、快適性向上のためのフットプリント持参がオススメです。 とは言え、専用品の販売はないため自作しましょう!
筆者のフットプリントは、100均で購入したアルミシート。 採寸して、きっちりやりたい方も居られるでしょうが、ズボラな筆者が簡単な方法を紹介します。 風のない屋外、または屋内で作業しましょう。

様々なサイズがありますが、今回は180Lx90Wのものを使用します。

だいたい左右対称にセット。

①設営シェルターの下に長方形のアルミマットを挿入し位置を決める。(頭~太もも辺りをカバーできる様に)

幕体より小さめになるよう5cmほど引き出し、2~3cmほど距離を取ってカット。

②5cmほど引き出し、ハサミでシェルター形状に沿ってカットする。

この状態でカットすれば左右対称のフットプリントに。

④アルミシートを引き抜き、半分折りにして反対側もカットする。

⑤簡単に完成!

ポイントは、幕体より少し小さめにカットすること。 万が一の降雨になった際、大きいと水溜りになります。

左が今回作製した180L。右の150Lと比較し一回り大きい

今回、撮影作業用では180L×90Wと長いものを使用しましたが、筆者のオススメ長さは、より軽量化・コンパクト化が可能な150Lです。その場合、シェルター上下部分にはフットプリントは行き渡りませんが、この辺りは重い負荷が掛かることはないため、なくてもOK。 就寝時の寝返りなどで足元辺りの生地への局所的な重量負荷が心配な場合、空になったザックを敷いておけば安心です。

いざという時のために…細引きを用意!

高強度&軽量なダイニーマ素材がオススメ

場所によっては、ペグが打ち込めなかったり、緩くてペグが利かないことも。 その場合、細引きがあると石で固定でき設営が可能になりますので、少なくとも上下の2本は準備しておくと助かります。

ストックシェルター使用時の注意点まとめ

①雨予報のときは使用しない
前述のとおり、耐水生地だが完全防水処理はされていないため、好天予報のときに利用しましょう。

②強風時にも控えるのがベター。
幕体そのものの大きさ・形状から、風に対する受圧面積が少ないため、風荷重は大きくありませんが、ペグ固定は2本、最大でも4本のため、強風時の使用は好ましくありません。

③設営場所を選ぼう。
なるべく風の影響が少ないテント場にて設営しましょう。 事前に調査し、樹林帯のテント場など幕営適地はたくさんあります。

④基本的に緊急用であることを忘れない。
このシェルターの良さは、軽量、且つコンパクト、設営がスピーディーなことです。 そのため、犠牲にしていることはたくさんあり、それらを求めることは出来ません。 快適性・安全性の程度をよく理解しておきましょう。

【総評】圧倒的なメリット勝ち!

一番乗りの朝日小屋テント場にて

メリット・デメリット色々ありますが、圧倒的なメリット勝ちで、筆者はこのストックシェルターに大満足しており、開発された方々に対し深い感謝の念を禁じえません。 日帰りハイクの際もいつもザックに放り込んであり、有事に備えられる安心感もとてもありがたいです。 今回紹介した注意点に留意し、軽量化の一案として検討してみてはいかがでしょうか。
尚、いくら簡単とは言え、事前に設営し手順を確認・練習しておきましょう。
それでは皆さま、どうぞ良い山行を!

文・出典表記がある写真以外の撮影 三宅 雅也 (山岳ライター、長野県自然保護レンジャー)

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