金属行人(11月14日付)

 金融市場などで最近、頻繁に登場するESG投資。機関投資家などが企業に投資する際、地球温暖化対策や社会貢献活動などの取り組みを判断材料とする投資スタンスだ。環境に悪影響を及ぼす企業を投資対象から除外するネガティブスクリーニングを標榜する投資家もある▼環境に優しい企業なのか、そうでないのか。判断する尺度はいろいろあるが、分かりやすいのは二酸化炭素排出量の多寡かもしれない。その場合、他の素材に比べ生産時の排出量が多い鉄鋼メーカーは誤解されやすい。排出量が多い最大の理由は生産量が桁違いなためだが、結果として数字だけが独り歩きしてしまう▼鉄鋼業は他の素材産業に比べ環境負荷が高いのだろうか。そんな疑問に答えてくれる計算方法が年内にもISO(国際標準化機構)で規格化される。いわゆるLCAの評価手法で、日本鉄鋼業の提案が規格化のきっかけとなった▼高炉と電炉を一体と捉え、リサイクル過程の環境負荷を含め鉄という素材を評価できる点で、画期的な計算方法だ。これを使うと、CO2排出総量という一断面だけの評価とは違う評価軸が見えてくる▼早速、鉄の需要業界がこの規格に関心を示しているという。計算はお得意の金融業界もきっと、このLCA計算手法に興味を抱くはずだ。

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