健康のための行動を自然に 「広告医学」とは?

 広く社会に発信し人々の関心を喚起する広告の視点を取り入れて健康の維持管理に関わる課題の解決を目指す横浜市立大学先端医科学研究センター(先端研、同市金沢区)のコミュニケーション・デザイン・センターが本格始動した。運動不足の解消、食生活の改善、感染症予防といった身近なテーマについて、デザインやコピーライティング(広告文章)の手法を取り入れ、健康行動を自然に動機付けて促す「広告医学」の実現を目指す。

 取り組みの初動として、同センターは今月、大手広告代理店の電通と連携し、「病気と向き合う活力を生む病院」をコンセプトにした「クリエイティブ・ホスピタル・プロジェクト」と名付けた取り組みに着手。国内初の試みとなる広告医学について患者や市民に知ってもらおうと、横浜市大付属病院(同区)で16日まで企画展示を開催している。

 展示しているのは、ウイルスを視覚化する「知らせるマスク」、子どもの気持ちを落ち着かせる仕掛けを施した「いないいない白衣」、健康状態を聞き出す愛らしい鳥型ロボット「ナイスバード」の3点。

 広告医学の導入は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究開発を先導する武部貴則・市大先端研教授の発案。今回の3事例は、武部教授とプロジェクトに参画する電通のデザイナーが対話を重ね試作化した。いずれも患者目線に立ったコミュニケーションを重視している。

 コミュニケーション・デザイン・センター長を務める武部教授は「日常生活の中でさりげなく健康行動がとれるよう、さまざまな課題に対しコミュニケーション・デザインが持つ可能性を発信していきたい。製品化を見据え、具体例を示しながら、超高齢社会に対応した新たな社会像を提案するムーブメントとして広めていきたい」と話している。

「知らせるマスク」など3事例を説明する武部教授 =横浜市大付属病院

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