個性生かしてデザイン
メッシュで版画
マンハッタン区にあるPIアートセンターで行われる版画の一種「シルクスクリーン」のクラス。机や床にインクが染みつき、年季の入った教室で20人ほどが制作に励む。入った時期や技能に従って制作課題が異なり、皆黙々と取り組む。
「皆さん、参考までに」と講師のリアキさんがよく通る声で呼び掛ける。この日はニューヨーク近代美術館PS1のブックフェアで見つけた作品の写真を紹介し、「あくまで参考です。見本にはしないで、自分の個性を大事にして。オリジナルを追究しましょう」。
シルクスクリーンは孔版と呼ばれる版画で、合成繊維のメッシュにインクを通す所と通さない所を作り、版を仕上げていく。木枠にメッシュを張り付けて固定し、人物や建物、文字など思い思いのデザインの版にする。デザインは暗室で特殊加工をして焼き付けていく。Tシャツやバッグなど好きな物に印刷でき、木枠を洗って乾かせば、インクの色を変えて何度も使える。
「簡単に始められますよ。ほら、彼なんて今日から受講ですけど上手でしょ?」と笑う。最初の2週間ほどは生徒に付き添い、やり方を教え込む。はけでインクを枠に詰める作業では「両手で力を入れながら手前に引いて」、「もう少し立てて」、と指導し、「上手上手」と褒めた。
クラスは英語で行われる。リアキさんは生徒の机を回り、ノートに文字をプリントした人には「クール! こうしたらもっと色が引き立つよ」と言い、図案を決めかねている人には「トートバッグ? どれどれ…」と相談に乗るなど、個別に助言していく。絵柄を手で描く人もいれば、パソコンを活用する人もいる。「得意な、やりたい方法でOK。個性を生かして」
初参加の井田篤さんは「センターの他の教室に通っていましたが、面白そうなのでこちらも受講しました。丁寧で分かりやすかった。いつかパーカーにプリントしたい」と意気込む。
日本で絵画を学んでいた村上加奈子さんは「1月から通い始めました。最初戸惑ったけど、すぐコツをつかめました。描き間違えたら塗りつぶせるアクリル絵画と違い、緊張感がある。めっちゃ楽しい」と話す。
半年ほど通う岡村絵理さんは「以前孔版を習っていた別の工房では機械で制作していました。この教室はDIYみたいな手作り感がいい。絵柄がちゃんと写るか、最初に見る瞬間が一番わくわくする」と笑顔。
生徒の作品をよく覚えているリアキさん。「やる気があれば誰でも大丈夫。一緒に作りましょう!」