「死ぬときまで最善尽くす」 拉致41年でめぐみさんの母

 1977年に新潟市内で中学1年生だった横田めぐみさん=失踪当時(13)=が北朝鮮に拉致されてから、15日で41年を迎えた。母早紀江さん(82)が14日、自宅のある川崎市川崎区で会見に応じ、拉致被害者家族の高齢化にも触れながら「なぜ41年も解決しないのか」と改めて焦燥感をあらわにした。

 めぐみさんが北朝鮮に拉致された疑惑が浮上したのは、失踪から20年たった97年のことだった。「言葉に尽くせないほどの精神的な苦痛を受け続けながら、ようやく昨今、拉致事件として世界中が知り、北朝鮮を厳しい目で見つめるようになった」。被害者家族の苦難の歩みをそう振り返った。

 解決の糸口が見いだせない政府には、「このままこの問題が積み残されていくことだけは絶対に許されない」と語気を強めると同時に、複雑な心境ものぞかせた。「政府の頑張りを信じるしかないが、本当に大丈夫なのかと思いながら日々を重ねてきている」

 そうした不安の原因は、高まる南北の融和ムードとも無関係ではない。今年に入り、北朝鮮と韓国、米国のトップがそれぞれ会談を行う中、日朝だけが取り残されている現状に、「会わなければ真実の話し合いはできない」と首脳会談の早期実現を求めた。

 昨年の会見に同席した夫の滋さん(86)は、入院中のため今年は姿を見せなかった。病気で言葉がうまく出ない滋さんだが、早紀江さんが拉致問題の新聞記事を読むと、短い言葉で「やっぱり難しいね」などと応じるという。毎日病院に通って夫のためにマッサージを続けている早紀江さんは、「私にはそれぐらいしかできませんから」と気丈に語った。

 先月、めぐみさんは54歳になった。早紀江さんは最愛の娘の写真に花を添え、いつものように「待っているからね」と語り掛けたという。「無事に帰ってくれさえすればいい。願いはそれだけ。死ぬときまで最善を尽くしたい」。自らに言い聞かせるように話した。

横田めぐみさんへの思いなどを語る母の早紀江さん=川崎市川崎区

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