【完全版】中島卓偉×SHIN - 11月20日に新宿LOFTにて2マンライブを開催する中島卓偉とSHINのSpecial Interview!!

ソロを始めたきっかけ

——お2人は今日が初対面だと思いますので、まずはそれぞれの音楽との出会いや、始めたきっかけ等をお話頂けたらと思います。

SHIN:僕がボーカリストを始めたきっかけは、J-POPのCHEMISTRYさんが入りなんですけど、それ以前に映画音楽が好きで、サントラとかをすごく昔から聴いていて。1980年代のシルヴェスター・スタローンの『ロッキー』とか、すごく大ヒットした『トップガン』とかのサントラが好きで、今の音楽はそこからすごく影響を受けていて。80年代の洋楽だったりとか。自分のボーカリストのルーツはCHEMISTRYさんなんですけど、バンド系の音楽を好きになったのは、GACKTさん入りなんですけど、今の音楽は映画音楽からの影響が強いですね。

卓偉:僕はThe BeatlesとPunkで、ほぼ洋楽しか聴いてないような状態だったんですけど、兄貴の影響もあるんでしょうけど、BOØWYは好きですね。ボーカリストとしては、ZIGGYの森重樹一さんの影響で歌おうと思いました。好きなメロディーラインとかっていうのは、やっぱりあるじゃないですか。そういうところで影響を受けて、自分で曲を書くようになったっていう感じですかね。

——ではソロを始めたきっかけや、その時の思いだったり決意を教えて下さい。

SHIN:元々僕は、ViViDっていうバンドをやってたんです。その時は有難いことにいろいろな場所に立たせて頂いたり、初めての経験ばっかりで。メジャー・デビューもしましたし、アニメのタイアップとかもやらせて頂いて、その中でバンドが解散して本当に自分が何もなくなった時に、「自分の核って何だろう?」「自分の本当にやりたいことって、本当は何なんだろう?」って立ち返った時に、「ソロなんじゃないかな」って思ったんですよ。自信はなかったんですけど、生きるか死ぬかだったらやってみるかって感じで始めて、今2年目になりました。ソロはすごい楽しいですし、人生で一番自分のやりたいことを表現出来てるのかなっていうところではあるので、ここから自分のやりたいことが表現出来るようにもう少し柔軟に活動してみたいなとも思っています。今年は特に、自分が育った畑じゃないジャンルの方たちとよく対バンをさせて頂いたり、初めてフェスに出たりするんですけど、音楽の世界って広いなって感じて。すごくいい音楽がいっぱいあったり、素敵な人たちがいっぱいいたりするんで、今回の卓偉さんとの出会いも僕はすごくそう感じるし、そういうふうなライブになったらいいなって思います。すいません、飛躍しました(笑)。

卓偉:いやいや、全然。バンドは何年くらい続けてたんですか?

SHIN:前のバンドは6年くらいなんですけど、バンド歴は10年くらいです。

卓偉:10年くらいはずっとバンドだったけど、ある時にやっぱりソロだなって思ったってことなんですね。

SHIN:そうですね。僕は人がいると自分の意志があんまり伝えられなくなっちゃうんですよ。例えばメンバーとかがいると、いい意味で意見を聞いて「じゃあ僕はこうしたい」っていう感じで、自分の意見をベースにするってことがあんまりバンドではなかったんで、ソロになってみて、意外と自分はこんなにやりたいことがあったんだなって(笑)。5人バンドだったんで、それぞれの価値観があったり曲を書いているのが僕ではなかったりしたんで、自分がやりたい曲調だったりメロディだったり、今はその世界観が全部自分で構築出来てるっていうのがすごいやりがいがあるなって思ってます。

卓偉:僕は自分のキャリアも考えた時に矛盾してるように聞こえるかもしれないんですけど、本当はバンドをやりたかったんですよね。バンドでデビューすることが目標であり夢だったんですけど、15歳とかで東京に出てきて、アルバイトをしながら東京でバンドを作ろうってやってたんですけど、いい出会いというか、運命も働かず、やっぱりどこか妥協しながらバンドをやっていて。自分が今やっているバンドで自分自身は自信を持てても、メンバーに対する思いとか、曲を書けるのが自分しかいなかったりっていうのもあって、ずっとジレンマというか、歯車が上手く回らない状態で、他のバンドのメンバーは早くデビューしようぜみたいなノリだったんですけど、そこにプロ意識とかっていうズレがあって、それで自分の責任は自分で取るべきというか、自分で曲も書いて自分で歌うというか、自分が作らないと何も始まらないっていうポジションで生きてきたので、バンドっていうとそれだけの責任も背負えないし、すぐに解散してしまうくらいだったら、デビューする必要もないしバンドでいる必要もないというか。途中で駄目だということが分かっているんだったら踏み込まないっていうところがありまして。高校も受験をしなかったのは、そういう理由で。辞められるじゃないですか、そして自分の意志じゃないところで辞めさせられもするわけですよね。だったら行かない、受験もしないっていう。だからバンドも「天才の集まりだし、才能の集まりだから、やってみよう」「どっかで爆発して解散なら、それでもいい」っていうのならやったんでしょうけど、納得もしてないのにバンドでデビューして、しかも曲を書いてない奴が途中で辞めるって言って、自分の責任じゃないところで駄目になるのはもう嫌だなっていうか、そういうポシャり方が嫌だったんですよね。それだったら、自分の責任で全部やれることで言うと、もうソロだなっていう感じで。10代の頃にバンドをやっていて、それが20歳くらいだったんですけど、そこからもう1回下積みして、デビュー出来るところまで漕ぎ着けたって感じですかね。もう20年前なんで、うろ覚えですけどね(笑)。

東京での最初のライブ

——卓偉さんは福岡県、SHINさんは長野県の出身ですが、いつ頃上京したんですか?

SHIN:卓偉さんは15歳なんですよね?

卓偉:そうそう僕はね、中学校3年で受験もせずにね。受験の日は自分だけが中学校に登校して、校長室で給食を食べなきゃいけないっていうね(笑)。「登校しなくていいっすか?」って聞いたら、「駄目だ、来い!」って言われて。それは覚えてますね。

SHIN:僕は18歳の時ですね。

卓偉:高卒で?

SHIN:はい。

卓偉:長野のどちらなんですか?

SHIN:松本市です。

卓偉:おー、いいですね! 城マニアなんで。

SHIN:あっ、そうなんですね! 国宝で松本城がありますね。

卓偉:松本城は何十回と観に行ってて、ウザイ奴なんですよ。

一同:(笑)

SHIN:松本城って、そんなに発見があります?

卓偉:国宝になって結構時間が経つけど、1600年代から残ってるし、あれだけ綺麗に残ってるのは珍しいですからね。ファンクラブ旅行で、松本城の見学を兼ねてやったりね(笑)。

——では、上京して最初に行ったライブハウスは覚えてますか?

卓偉:新宿LOFTですよ。

——小滝橋の?

卓偉:そうそう、昔の。95年のLAUGHIN’NOSEの再結成のライブだったと思います。

SHIN:僕は、忘れちゃいました…。

——では、記憶の中で一番古いライブハウスとかはどうですかね?

SHIN:…多分、原宿のアストロホールだったと思います。

——何を観たか覚えてますか?

SHIN:NoGoDさんです(笑)。

一同:へー!

卓偉:おっ、団長(NoGoDのVo)! いいね。

SHIN:お知り合いですか?

卓偉:自分で言うのはおこがましいんだけど、彼は僕のファンでいてくれて。すごい僕のこと知ってくれているんだよね。それで対談もやらせてもらったり、対バンもやったことあるよ。

SHIN:そうなんですね。実はこのことは、人生で初めて話しました(笑)。

ボーカルとして譲れないこと・崩せないスタイル

——ボーカルとして譲れないことや、崩せないボーカルのスタイルはどんなことですか?

SHIN:譲れないこと…、今は手を抜かないことですかね。

——何に対してもですか?

SHIN:はい、全部ですね。

——崩せないボーカルのスタイルはどうですか?

SHIN:自分が憧れたGACKTさんとか、hydeさんのようなビジョンを目指してるんですね。昔はそうなりたいって思ってたんですけど、そういうような存在とか、今はああいう人はいないじゃないですか。自分のスタイルというか、何を歌っても、この格好やこの見た目でずっと居続けようかなってとこですかね。そこはブレないでいきたいところですね。

——卓偉さんはどうですか?

卓偉:う〜ん、「これは譲れねー」って胸張って言うと、本当に譲れねー奴って思われるのも嫌なんで(笑)。ボーカルにせよ、どのパートの楽器にしても、基本譲れる人の方が僕は分かっているいいミュージシャンだと思うんですよね。例えばギターソロとかでもいつまでも前に出しゃばって出るボーカリストっていうのは、ギターにスポットが当たってるはずなのに自分が前に出ようとする奴は、出たがりなわけで譲れないとかって言ってると、ちょっと意味が違うと思うんですよね。そういうところをサッと譲れるかどうかっていうオン・オフがあったりとか、出し引きが出来る人の方が僕は格好いいと思うから、譲れないっていうプライドを掲げてステージに立ってる奴は、ちょっと「う〜ん」って思うんですよね。何をしてなくても、引いた時でも格好良く見える方がボーカリストは絶対にいいでしょうし。そんなにこだわりはないですけどね。あと崩せないっていうことでいうと、これは自分自身の問題なんですけど、デビューした時から体重が1kgも変わってないです(笑)。

SHIN:(笑)。それはすごいですね。

卓偉:ずっと鍛えてるから。自分が憧れた洋楽のミュージシャンとかが、時が経てば経つほどみんな太るし。顔にシワが増えて頭の毛が薄くなるとかは、それはもう人間ですからいいと思うんですよ。フォルムとかオーラっていうんですかね、そういうものを「これでいいじゃん」って開き直り始めて、ファンもそれを許してるっていう関係性が、自分にとっては美しい状況には見えなくてですね。ZIGGYの森重樹一さんは、今だにデビュー当時と同じフォルムでキーも下げずにやられてて、やっぱりこういうことだなって思いますし、ミック・ジャガーがやっぱりそうですから。75歳であれだけの筋肉と細い体を維持して、しかも2時間半や3時間のライブが出来る、ずっと踊り続けられるっていうのを見て、やっぱりすごいなと思うんですよね。最初にも言いましたけど、そうなっていきたいってことでいうと、崩せないっていうのは一つ、フォルムとかスタイルとか、そこは自分に驕りたくないですね。自分のファンに、「やっぱり卓偉はそういうところを努力し続けてくれたよね」って言われるのはもちろん嬉しいんですけど、一番は自分が、まだ音楽論とかをよく分かっていなかった多感な10代の前半の頃に、Rock’n’RollだとかPunkだっていうところに心を鷲掴みにされた、格好いいって思った気持ちを、あの初期衝動を裏切りたくないですね。変わらないで居続けろってことじゃなくって、絶対誰でも歳を取るから変わってっていいと思うんですよ。だけど、自分自身の13歳の頃のあの初期衝動を裏切りたくないっていう気持ちが強いんで、もし譲れないところって言ったら、そういうところが譲れないかもしれないですけどね。そういうこだわりはずっと持ってますね。

作詞に関して

——お互いに作詞をされてますが、作詞をする際に気を付けていることや心掛けていることは何ですか?

SHIN:僕は曲を作る時はメロ先(メロディ先行)なんですけど、メロディが一番綺麗に聴こえる言葉を選びます。だから詩先は1回もなくて。ソロになってから英詩を取り入れるようになったんですけど、英語は音の言語だから、一番メロディが綺麗に聴こえるなって。別に僕は英語がペラペラって訳ではないんですけど、それがすごく自分のこだわりでもあって。でも日本の人に向けてる訳だから、日本語もやっぱり混ぜなきゃなって思ったりもしてるんですけど。僕の中で一番聴いて欲しいところだったり感じて欲しいところは、メロディの流れだったりするから、それが一番耳馴染みのいいような言葉だったり母音だったりに気を付けて歌詞を付けてます。

——卓偉さんはどうですか?

卓偉:自分が歌い易いかどうかっていうのがまず重要で、それからデモなりレコーディングなりして、読んでいい歌詞でも聴こえが悪かったら、SHINくんが言ってる聴こえ方っていう意味合いでは、聴こえ方が悪ければやっぱり変えますね。あとはいろいろルールを付けて、こうじゃなきゃいけないとか思ってやってた時期もあったんですけど、だんだんそういうのも取っ払ってなくなってきて、良ければいいっていう単純なアプローチの方が今は強くてですね。僕も長らく、メロディ先で詩を当てはめるようにしてたんですけど、気付くと一番いい曲の形っていうのは、詩とメロディが同時をいう気がするんですよね。同時に降りてきた言葉っていうのは、やっぱり結構でかいなって。変える必要がなくなるというか、アレンジの必要がなくなるというか。詩から書いて作ってみようと思った時期もあって。その時は結構言いたいことがバーッと出てきたりして、このバッキングに対して言葉が上手く入るようにメロディを考え直せばいいやと思ってやった時期もあって。それはそこにまた良さもあるので、そういうこともいろいろ経て、今は実はこだわってるところの理由も見つからなくなってきているというか、ラフで良ければいいって考えに行き着いたって感じですね。

SHIN:僕は、今回対談や対バンをさせて頂くにあたって、曲を何曲か聴かせて頂いたんですけど、背中を押してくれるような、すごく歌詞を大事になさっている方なんだなって印象を受けました。

卓偉:嬉しいです。僕もね、実はデビューして最初の2〜3年は英語をよく使ってて、英語の方が音が滑るっていうのはよく分かるんですよ。結局でたらめ英語でデモテープを録ってたりして、それをそのまま近い英語に直したりね。それもいいかなと思ってた時もあったんですけど、だんだん歳を取ってくると、自分がステージに立ってる時に自分自身にも置き換えられるっていうか、自分自身に歌って、それが嘘のないようにしなきゃいけないっていう変な責任感も出てきて、そういう風になってから、よっぽど歌詞が意味の強いものというか、簡単な言葉でも意味が深いものというか、1ワードでいくつかの意味に取れる場合もあるじゃないですか。どっちにでも取れる言葉の方が説得力があるのかなとか、そういう風に思うようになりましたね。

SHIN:参考になります。

——実体験を組み込んだりもしますか?

SHIN:僕は実体験しかないです。

卓偉:おっ、いいですね。僕は、実体験もほぼ書いてきましたけど、ちょっと広げる場合もありますし、全くもって物語で、ストーリー性を持って脚本家になったような気持ちで書く場合もあるんですね。でも思ってないと書けないことですから、結局は自分のことなんでしょうけどね。

ソロでの悩み

SHIN:卓偉さんはすごく長いことソロをされてるじゃないですか。ソロは全部自分の責任じゃないですか。僕は悩むと内に入っちゃうタイプで、爆発するくらいになるんですけど、そうなった時ってどうなさってるんですか?

卓偉:そうですよね。バンドだと、4人いたら4分割したり出来るしね。

SHIN:メンバーに言えるじゃないですか。だから怒れるって幸せなことだなって思うんですよね。ブチ切れようにも、今はどうしたらいいか分からず…。

卓偉:バンドの時は喧嘩とかしたんですか?

SHIN:僕は、傍観者でした。喧嘩はしてるんですけど、ソロになってからようやく心が人間らしくなったというか。それまでは全てを傍観しているような感じだったんですけど。

卓偉:バンドメンバーって傍観者も必要だからね。

SHIN:だったんですけど、今になってすごく…。ソロって、そうならざるを得ない状況っていうのもあるじゃないですか。いいこともあれば、悪いこととか、いろいろなものが湧き出てきて、それが悪い時だった場合…。

卓偉:要するにモヤモヤして、ネガティブになってしまうってことだよね?

SHIN:はい、そうです。

卓偉:う〜ん、でもこう思うんですよね。最初にも言ったことですけど、結局は自分の責任だってことが自分で分かってる訳じゃない。尚かつ、自分が作詞・作曲をしていて自分が書かないと始まらないプロジェクトだってことじゃないですか。ここに結局自分の考えが行き着くと、もう駄目だと思うんだったら自分が書かなきゃいい訳で、書かなくなる=ここでストップだなって単純に思うだけで、このプロジェクトは終わりなんだろうし。それでもやっぱり自分には、言いたいこと、書きたいこと、パフォーマンスしたいことがあると思えば、やっぱり書くんだと思うんですよね。そこに行き着けなくなるから、人って多分終わるんだと思うんですよね。書く人でも。僕は中学生の頃に自分で曲が書けるって分かってからずっと書いてて、今も曲を書きたくないって思うことがないから。詩はすごく時間が掛かるし、いつまでに書かなきゃいけないってなると、そりゃ苦しくなるけれども、結局ステージに立ってる時に、自分の言葉、自分のメロディでパフォーマンスするっていうことじゃないと、胸が張れないっていうのが分かってるから、自分がやんなきゃ始まらないしっていう開き直り、そういうところにいつも行き着くように出来てる気がしますね。あとは傷ついた理由とか、ネガティブになる理由を紐解いて行くと、他人に言われたことでそうなってることがほとんどなのよ。自分自身は自分のことを傷つけたりしないし…、傷つけることもあるのかもしれないけど。結果そういう邪念で自分が立ち止まっているなってことに気付くんですよね。「そんなことを気にして何になるんだろう?」っていうことが分かると、「全然ネガティブになる理由はないな」とか、そういうことにまた行き着いて。行き着くところでポジティブな気持ちが待ってれば、大丈夫だと思いますけどね。

SHIN:すごい勉強になります。

卓偉:ただ最初の2年で、まだ自分の中で苦しいこととか、晴れないことって当然あると思いますし。19年やってても、今だにソロとかよく分からないからね(笑)。

一同:(笑)

卓偉:5年目の時もよく分からなかったし、10年経っても「10年か」って思うし。別に答えもないというか。ただ僕がデビューした当時は、ソロでバンドっぽくやってる人って0で、「バンドで出てください」ってなるからイベントは出れないし。ソロなんだけど、後ろにメンバーがいてそういう形でやってるんですよって言っても伝わらないし。世間に対するプロモーションもしづらいとレコード会社からも何年も言われ続け…。とは言ってもやっていくと、中島卓偉って人は自分で曲も書いて、一緒にパフォーマンスもしてやってるから、そういうジャンルなんだろうねっていう風に言ってくれる人がちょっとずつでも増えればいい訳じゃないですか。僕なんかは、「何でそんなことを言われるのかな?」と思ってたけどね。じゃあ、「レニー・クラヴィッツはどうなんだ?」とか「デヴィッド・ボウイはどうなんだ?」って話をしても、伝わらないんだよね。ソロでバンドっぽくやってる人は、海外を見たら5万といるのに。やってる人がいないと同じような道が打てないって言われちゃうのが、最初の5年くらいは困りましたね。

SHIN:確かにそうですね。僕も今、同じ状況です(笑)。

卓偉:だから「ソロなのに」とか「バンドなのに」とか、2人組とか3人組とかのバンドとまでは言えない人数のユニットとか、そういう人数でやることに関して、それはデメリットもメリットもあるんですけど、結局は自分が、「これがやりたいし、これがやりたいから今このポジションで」とか、ソロなら「ソロなんです」とか、「メンバーが全員集まらなかったから、3人でいいじゃないですか」とか、そういう風に胸が張れるかどうかっていう方が重要かと思いますね。

SHIN:なるほど。有難うございます!

卓偉:とんでもないです。

対バンへの歩み寄り

卓偉:対バンってよくやられてますか?

SHIN:割と2マンや3マンが多いですね。

卓偉:その時って、対バン用のセットリストになったりします?

SHIN:僕はそもそもまだ曲がそんなにないんで、ほぼやります。なのでワンマン用とかイベント用っていう棲み分けは自分の中では特にないです。

卓偉:なるほど。僕は相手方によって、ちょっと寄ったセットリストにいい意味でわざとするんですよね。極端な例を言うと、相手がすごいパンクバンドだったら、自分もバラードばっかりやってもしょうがないしね(笑)。NoGoDと対バンした時は…、あの時は団長に聴きたい曲があるか聞いて、セットリストは全部団長が決めたの。

SHIN:へー!

卓偉:それくらい寄っても大丈夫というか。ヘヴィなバンドがいたら、ヘヴィな曲を寄せてったり。イベントってさ、どうしても知らないファン同士がいるから、当然最初は水と油になってもしょうがないじゃない。だけど曲調とかテンポ間とかグルーヴとかが近い曲が並ぶとわりかしスイングするというかね。自分が10代の時にいろんな洋楽の対バンとか観てて、それはあるなって思ったりしたんですよね。20代の時ですけど、サマソニとか観に行って、多分だけど、どう考えてもこの並びで仲の悪い国のバンドっているじゃない。すっげー盛り上がると、本当は仲が良かったら自分も同じようなセットリストで歩み寄って行くんだけど、すっげー盛り上がった後に、1曲目をバラードから始めるバンドがいるんだよ。絶対にそのバンド同士は仲が悪いから。

一同:(笑)

卓偉:そういうのって、結構冷静に見ていると分かるから。僕はそれは良くないなと思う方なんだよ。フェスは朝11時から始まって20時くらいまでやるから、1日約12〜13バンドがバーっと流れてくから、全部が同じようなセットリストでやったら、もちろん困るっていうのはあるんでしょうけど。それは主催者側も上手く組み込んでるはずなんだけど、極端過ぎる場合って良くないなって思う方なんですよね。だからそれだけちょっと聞いてみたかったんですよね。

SHIN:そうですね…。パンキッシュと言えばパンキッシュな曲もありますし。

卓偉:ハードな?

SHIN:はい、ハードな。パンキッシュと言っても、アヴリル・ラヴィーンくらいな感じとか。あとはリンキン・パークとか。

卓偉:あぁ、ヘヴィな。

SHIN:でも僕はあんまりラウドな声は出せないんで、あのサウンドに自分の中でメロディを付けて。メロディはすごくメロディアスに付けてるんで。

卓偉:いいと思います。メロディは大事だよね。みんなデスボイスみたいな声を出すよね。すごいよね。

SHIN:喉を痛めそうで。

一同:(笑)

卓偉:痛めずにやれる方法があるらしいよ。ただ僕はメタルとハードロックとかを通ってないから。

SHIN:僕もメタルは通ってないです。

卓偉:かと言って歌謡曲も通ってる訳じゃないんですけど、メロディが綺麗って、すごい重要じゃないですか。いいメロディをデス声で歌う必要は全然ないと思う方なんで。

SHIN:確かに。

卓偉:だからヘヴィな曲も、ヘヴィであってもやっぱりメロディックっていうのが、すごく好きなんだよね。

SHIN:僕はミックスボイスにすごい憧れてて。ニッケルバックとか、リンキン・パークも言ったらそうなんですけど。自分に出来ないからこそなんです。

卓偉:ミックスボイスを取得したい派?

SHIN:はい、ミックスボックスはちょっとやってみたいなって思います。

卓偉:僕ね、この5〜6年でミックスボイスって世間で言われるようになった気がするんですよね。ミックスボイスって、キーの高さが昔は地声と裏声の2つしかなかったのに、地声と裏声を足して出すような歌い方があるんですよ。最近の20代の若い子たちってそういう歌い方をしてて、キーが高いですよね?

SHIN:高いですね。

卓偉:そういう出し方がいいっていうこともあるんでしょうけど、僕は基本、高いキーも地声で出そうとして、それ以上出ないなと思ったら、裏声に持ってくやり方なんですけど。人から言わすと僕の中域から上は、「卓偉くんだって、それミックスボイスじゃないの?」って言う人もいるんですけど、自分がやってることは自分しか分からなくて、「いや、これはミックスボイスじゃなくて地声だし」って思う感覚があるんですよね。ミックスボイスを取得すると、声が小さくなるよね。

SHIN:そうですね。

卓偉:そうするとね、PAの人たちが大変なんだってね。みんなイヤモニで…。SHINくんはイヤモニ?

SHIN:僕はイヤモニは使わない派だったんですけど…。

卓偉:いいね! それいい!

SHIN:イヤモニはずっと使ってなくて…。

卓偉:いい! これね、別にディスる訳でも何でもないんだけど、僕ねイヤモニはアンチなんだよね。

SHIN:あっ、本当ですか!? すみません、最近型を取ったんですけど…。

卓偉:あっ、嘘!

一同:(笑)

卓偉:でもリハでも使ってとかでイヤモニを使い過ぎると、全然声が出なくなるよ。喉が不調になってツアーを延期するバンドっているじゃん。絶対にイヤモニのせいなのよ。

SHIN:ちょっとの声で聞こえちゃいますしね。

卓偉:そうそう。やっぱり満足しちゃうから、出音で自分の歌がどんだけ重なっているかってことに、まず耳が行かなくなるんだよね。あとSHINくんはバンドをやってたから分かると思うんだけど、Marshall(ギターアンプ)とかAmpeg(ベースアンプ)のアンプに対して、「聴こえねーからもっと張り上げるぞ」ってやるから、ボーカリストって喉が強くなるはずなんだよね。ギターとかって、ボリュームがでかいじゃん。ボーカリストの喉っていうのはアンプじゃないから、喉を締めれば歪む声も出るけど、基本的にアンプで持ち上げれば歪むってものじゃないじゃないですか。だからいかにマイクに乗る声、そして耳で聴こえるんじゃなくて、ちゃんと骨とか体とか骨格に鳴らして、今声が鳴ってるっていう感覚を忘れると良くないらしいのよ。イヤモニはそれをどんどん忘れさすらしいのよ。

SHIN:なるほど。

卓偉:だから今の世代の人たちは、コロガシじゃなくて最初からイヤモニでやるっていう世代だから、僕も否定は全然しないんですけど、ただ今だに若手でも年配の方でもイヤモニをせずにやってる人は、やっぱり声が出てるよ。それにキープ出来てるっていうか。どっちがやり易いかって言ったら、それはイヤモニって言い方になっちゃうんでしょうけど。僕は、イヤモニが始まったくらいの時に札幌で「イヤモニでやってくれ」ってPAさんに言われてライブをやった時に、2曲目で引きちぎってやったから。

一同:(笑)

卓偉:僕ね、自分の声をマイクの中でダイナミクスをつけてるわけ。すごく張る時はやっぱり張るし、小さめに歌う平歌とかはオンマイクで歌ってるわけじゃないですか。でも同じボリュームで声が返ってくると、当然張るとうるさいんだよ。それで耳が終わりそうになって、こんなの出来るかって。それ以来、イヤモニはやってないんだよ(笑)。

一同:(笑)

卓偉:だから本当に歌に集中したい、バラードっぽい曲だけのライブの時とかは、イヤモニはいいと思うんだよね。

SHIN:あっ、確かにそうですね。

卓偉:ちょっと会場でお客さんと距離が離れ過ぎてる時とか、ステージが大きい時に「今日はイヤモニで」とかって考えはいいと思うんだけどね。やっぱりダイレクトにみんなの音が聴こえる臨場感の元でやりたいっていうのがありますね。

SHIN:僕は付ける時は片耳なんですよ。すごい悪いって聞きますけど、自分の空気感というかが聴こえてないと。

卓偉:そうなんですね。人間も利き耳っていうのがあるらしいんですよ。僕は左なんですけど。利き耳を出して、わざと利き耳じゃない方でイヤモニをするって人もいるみたい。

SHIN:多分、僕はそれですね。

卓偉:そっちの方がね、利き耳じゃない方の耳も鍛えられるらしいよ。

SHIN:あっ、そうなんですね。

卓偉:人間って、電話も利き耳でやってるんだって。それを逆でやると電話って出来ないらしいんだよ。それをやったりすると、耳って鍛えられるんだって。

SHIN:知らなかったです。

卓偉:でもそれが、ステージに活きるかどうかまでは分からなけど(笑)。

一同:(笑)

11月20日公演への意気込み

——先程、卓偉さんは上京して最初に行ったライブハウスが新宿LOFTとおっしゃって下さってましたが、お二人とも新宿LOFTはいつ頃から知っていたのかと、どういう印象を持っていたかをお聞きしたいです。

卓偉:僕は小学5年くらいの時に、兄貴が中1になって当時の音楽雑誌とかを友達の貸し借りで家に持ってきてたりしてて、最後のページにツアースケジュールとかが載ってたと思うんですよね。そういうので名前を見て、多分新宿LOFTっていうのが頭に入ったんだと思うんですよね。

——実際に小滝橋の新宿LOFTへ行った時の印象はどうでしたか?

卓偉:15〜16歳とかだったので、やっぱり怖かったですよね(笑)。やっぱり自分が世間を知らないからよっぽどだっていうのもあるし、自分は身長が低いし、前の新宿LOFTはステージが低くて全然見えなかったんですね。それに新宿LOFTって男の客が多かったんで、よっぽど背が高くなきゃ見えない感じというか。階段を下りたところで見てたりとかもしましたけど。ここでBOØWYもやってたんだなとか、それは思いましたね。そういう印象ですね。

SHIN:僕は実は出演したことがなくて、今回が初なんで楽しみです。

——新宿LOFTの印象とかってありますか?

SHIN:そうですね。“ライブハウス”っていう感じだというのは聞いていて、今の自分のスタイルはライブハウスが似合うなって思ってるんで、お客さんとの距離が近ければ近いほど僕もテンションが上がるんで、すごく楽しみですね。

——11月20日は是非最後にセッションとかをして頂きたいのですが…。

卓偉:もちろん! 何かやりましょう。

SHIN:はい、何かをじゃあ!

——有難うございます! それでは2マンライブへの意気込みを一言ずつお願いします。

SHIN:とにかくライブが出来るのが、今幸せなので。今回はこういうご縁で卓偉さんとご一緒させて頂くんですけど、常に僕はワンマンだろうがイベントだろうが120%でいくので、初めて観られる方も当然いらっしゃいますでしょうし、僕のファンの人もいると思いますけど、2年ソロをやってきて、本当に1回として同じライブはあったことがないんで、その日はその日ですごくいい空間に出来たらなと思うんで、楽しみにしていて下さい。

卓偉:今話が出たセッションとかでお互いの曲をカバーし合うとかもあってもいいのかもしれないですし、それも擦り合わせしながら、ジャンルが違っても成立するような、楽しかったねと言ってもらえるイベントに出来たらなと思いますね。

——有難うございます! 当日も楽しみにしてます。

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