賢人会議 閉幕 「核禁条約に向き合って」 被爆者ら NPT重視の議論進行に

 15日に長崎市で閉幕した核軍縮に関する外務省主催の「賢人会議」。米ロなどの核保有を認めた核拡散防止条約(NPT)の枠組みを重視した格好で議論が進んだが、長崎の被爆者や識者からは国連で昨年採択された核兵器禁止条約にもっと向き合うよう求める声が上がった。
 賢人会議は「核なき世界」へ向け、NPTは「引き続き中心的な存在」としている。NPTは核保有国に誠実な軍縮義務を課しているが、米ロは逆行した動きを見せている。外務省などによると、今回、核禁止条約を巡り、委員から「核なき世界へ位置付けるべき」「現状に合わない」と賛否の声が出たが、条約に反対している日本政府を批判する意見は特に出なかったという。
 こうした現状について、県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(78)は「核廃絶を目指すのなら、日本の禁止条約への賛同がスタートだ。政府は本気で核廃絶に向き合おうとしていないのではないか」と批判。長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(78)も「賢人会議は、政府の狙い通りに動いているように映る」と語った。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の鈴木達治郎センター長(67)は「議論の中に禁止条約を組み込むと対立がはっきりしてしまう」と一定理解を示しつつも「NPTで核軍縮がうまくいっていないから禁止条約ができた。NPTを軸とするのであれば、その難しさを乗り越えるための提案がほしい」と注文を付けた。

賢人会議の委員(右側)と平和活動に取り組む団体や被爆者、高校生らの意見交換会=長崎市平野町、長崎原爆資料館

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