2018年パ6球団の2つの“誤算” 移籍で輝いた左腕、和製大砲の不振…

オリックス・比嘉(左)、ソフトバンク・加治屋【画像:(C)PLM】

楽天の田中は18本塁打を放つなど今季大ブレーク

 野球界における「誤算」という言葉は、多くの場合期待に応えられなかった選手に対して使われる。ただし、その前にポジティブな言葉がつけば話は別だ。今回は2018年シーズンを通じて、各球団にとって「うれしい誤算」となった選手と、来季以降の復活が期待される選手たちを紹介していく。

〇北海道日本ハム
【うれしい誤算】
石川直也投手
昨季成績:37試合 49.2回0勝1敗7ホールド 防御率4.35
今季成績:52試合 48.2回1勝2敗18ホールド19セーブ 防御率2.59

 石川直は、まだ21歳ながら守護神に抜擢されて開幕を迎えた。序盤は失点して涙を流す姿が話題となったが、配置転換や登録抹消などを経験し、リリーフ陣の柱へと急成長。ポストシーズンでも危なげなくセーブを記録するなど、心身の両面において大きな飛躍を遂げたシーズンとなったことだろう。

【復活に期待】
松本剛内野手
昨季成績:115試合 402打数110安打5本塁打33打点 打率.274
今季成績:54試合 126打数28安打1本塁打9打点 打率.222

 昨季ブレイクを果たして外野のレギュラーを獲得した松本だったが、今季は深刻な打撃不振にあえいだ。復調を感じさせる時期もあったが、一度手にしかけたレギュラーの座を手放す形に。まだ25歳と若いだけに、来季以降の巻き返しが期待される。

〇東北楽天
【うれしい誤算】
田中和基外野手
昨季成績:51試合 54打数6安打1本塁打2打点 打率.111
今季成績:105試合 423打数112安打18本塁打45打点 打率.265

 ルーキーイヤーの昨季は、代走や守備要員としての出場が主だったが、今季は打撃面でもその潜在能力を発揮。長打力と俊足、守備力を兼ね備え、新人王候補に挙げられるブレイクを果たした。走攻守のすべてにおいて、スケールの大きさを感じさせる24歳。その存在を全国の野球ファンに知らしめる1年となったと言える。

【復活に期待】
福山博之投手
昨季成績:65試合 59.2回6勝0敗23ホールド7セーブ 防御率1.06
今季成績:21試合 21.1回1勝2敗3ホールド 防御率6.75

 4年連続で65試合以上に登板して、防御率2点台以下という抜群の安定感を誇っていた福山だが、今季7月以降は1軍マウンドからも遠ざかることに。ファンからの人気も高い「サブちゃん」の復活を、東北の人々は心待ちにしている。

阪神から移籍の榎田は自身初の2桁勝利をマークしリーグ優勝に貢献

〇埼玉西武
【うれしい誤算】
榎田大樹投手
昨季成績:3試合 6.1回0勝0敗1ホールド 防御率1.42
今季成績:23試合 132.2回11勝4敗 防御率3.32

 昨季の登板はわずか3試合だった左腕にとって、リーグを跨ぐ今回のトレードは大きな転機となった。新天地で4年ぶりに先発を任され、安定した投球を続けて首脳陣の信頼をガッチリとつかむ。その後も数少ない「計算できる投手」として勝ち星を積み重ね、自身初の2桁勝利を達成。自らの生きる道を切り拓き、移籍1年目で初の歓喜を味わった。

【復活に期待】
増田達至投手
昨季成績:57試合 56.1回1勝5敗4ホールド28セーブ 防御率2.40
今季成績:41試合 38.1回2勝4敗2ホールド14セーブ 防御率5.17

 昨季まで2年続けて28セーブを記録し、守護神に君臨していた増田。しかし今季は安定感を欠く投球が目立ち、シーズン途中に抑えの座から外されることに。終盤には復調を感じさせたが、プロ入り以来5年続けて3点台以内だった防御率も5点台に落ち込む苦難のシーズンとなった。

〇千葉ロッテ
【うれしい誤算】
井上晴哉内野手
昨季成績:35試合113打数26安打0本塁打11打点 打率.230
今季成績:133試合476打数139安打24本塁打99打点 打率.292

 昨季まで1軍通算4本塁打だった井上は、5年目となる今季、ついに覚醒。チームの日本人選手としては、2013年の井口現監督以来となる20本塁打超えを果たしている。打撃面においては豪快なアーチはもちろんのこと、確実性と勝負強さも兼ね備えているだけに、本拠地の本塁打ゾーンが広がる来季は、さらなる成績向上に期待がかかる。

【復活に期待】
加藤翔平外野手
昨季成績:98試合271打数72安打5本塁打27打点 打率.266
今季成績:69試合121打数28安打0本塁打 9打点 打率.231

 昨季はブレイクの兆しを見せてレギュラー定着まであと一歩に迫ったが、今季は改めて課題が浮き彫りとなるシーズンに。132打席でわずか5四球、出塁率.266という選球眼の問題も、出場機会を減らす要素の一つとなった。限られた機会で7盗塁を記録した俊足や巧みな外野守備は得難いものであるだけに、短所を少しでも減らして一軍定着を狙う。

〇オリックス
【うれしい誤算】
比嘉幹貴投手
昨季成績:8試合 8.1回0勝1敗1ホールド 防御率3.24
今季成績:43試合 35.1回0勝2敗9ホールド1セーブ 防御率2.04

 2014年に62試合に登板して防御率0.79という驚異的な成績を残した比嘉。その後数年間は勤続疲労と故障によって低迷したが、今季は全盛期を彷彿とさせる投げっぷりでかつての「切り札」復活を知らしめた。8月4日の福岡ソフトバンク戦では、プロ入り初となるセーブも記録している。

【復活に期待】
T-岡田外野手
昨季成績:143試合504打数134安打31本塁打 68打点 打率.266
今季成績:97試合298打数67安打13本塁打43打点 打率.225

 昨季は7年ぶりに30本塁打を放ち「浪速の轟砲」復活を印象付けたT-岡田。しかしオープン戦で大スランプに陥って開幕を2軍で迎えると、そのまま低空飛行。来季こそは、かつての本塁打王完全復活のシーズンとしたいところだ。

日本一連覇のソフトバンクは加治屋が球団記録タイの72試合に登板

〇福岡ソフトバンク
【うれしい誤算】
加治屋蓮投手
昨季成績:2試合 4.1回0勝0敗 防御率10.38
今季成績:72試合 66.2回4勝3敗31ホールド 防御率3.38

 2013年ドラフト1位ながら、昨年までのプロ4年で1軍登板はわずか4試合に終わっていた加治屋投手。しかし、今季は年間を通じてセットアッパーとしてフル回転。リーグ最多、球団記録タイの72試合に登板し、故障者が続出した投手陣を支えた。

【復活に期待】
モイネロ投手
昨季成績:34試合 35.2回4勝3敗15ホールド1セーブ 防御率2.52
今季成績:49試合 45.2回5勝1敗13ホールド 防御率4.53

 昨季途中、彗星のように現れて一軍デビューを果たすと、セットアッパーとしてチームの日本一に大きく貢献した若き左腕。今季はさらなる飛躍が期待されたが、苦しい投球が続くシーズンとなった。昨季は14個だった四球が24個に増加し、わずか1本だった被本塁打も6本に。この結果を来季以降の成長への糧としたい。

 以上のように、今季はこれまで伸び悩んだ選手が大きく飛躍するケースと、昨季までの主軸が大スランプに陥るケースの双方が見られた。来季もチーム内、そしてリーグ全体の勢力図がめまぐるしく変わるような、スリリングな1年となるのか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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