NY幼児教育の仕組み ママたちが語る本音

共働きの親が多いニューヨークでは、生後3カ月程度から子供をナニーか私立のデイケア(保育園)に預けるのが一般的といわれるが、義務教育ではない保育料は高額になる。

保育以上の教育を行うプリスクールは2歳前後からのクラスが多い。3歳になると地域により「3-K Program」などの無料のクラスが登場する。さらに4歳からの「プリK」は、義務教育ではないが市内全ての児童分の受け皿が原則用意されている。

無料で通える選択肢は小学校付属の「District School」、プリKのみが独立した「Pre-K Centers」、教育局から援助を受ける私立の「NYCEECs」。5歳のK(キンダーガーデン)からは実質義務教育扱い。私立もあるが、公立は原則居住地域(ゾーン)の学校に通う。

これらの基本情報を踏まえて、公立のプリKやKに通わせる際の学校選びなどについて「NYママの会」の宮本ボーグ麗さん、牧野佐絵さん、神内深雪さんに、リアルな本音を聞いた。

質問1 日本との違いは?

牧野 Kは基本的に小学校1年だと思った方がいいです。読解や算数などの授業があります。プリKは幼稚園に近く、自分の席に座っている時間が短い。

宮本 Kは自由に見えても最近は求められる教育レベルが高くなっている印象です。
神内 5歳で足し算をやるのは驚きました。「5年前はこんなに早く教えなかった」という先生も。

牧野 算数、英語、理科は力を注いでいますが、美術、体育、音楽は日本よりレベルが低いので、お金を払ってアフタースクールで習わせることが多いです。

宮本 アメリカでは協調性をあまり求められないので、重視する親はチームスポーツをやらせています。

(左から)宮本ボーグ麗さん(ニューヨーク在住歴16年。子供は11歳と7歳)、牧野佐絵さん(同在住歴14年。子供は12歳と9歳)、神内深雪さん(同在住歴14年。子供は12歳)/NYママの会=日本人向けの子育て交流・情報提供をしている。毎月第3月曜にイベントを開催

質問2 良い学区とは?

牧野 子供の教育に親がどこまで興味があるかが一番重要。悪い学区では親が無関心で宿題をやらなくても気にしなかったりします。そうすると、どんどん成績が落ちてしまう。

神内 一生懸命やる子が多いと良い影響を与え合います。また親も熱心。

宮本 親の財力の違いもあります。うちの学校はエンリッチメントプログラム(課外授業)が豊富で、学年全体にダンスを教えたりしてくれます。資金はPA(PTA)の基金募集パーティーから出ています。パーティーを催す労力と時間がある、熱心な親が多くいエリアであるのも大事。

牧野 学区の良し悪しは基本的に州が実施するテストの結果に左右されます。評判が高い学校は良い成績を出している。

ただし、良い学区だから必ず良い先生、というわけではなく、どの学校でも良い先生と、そうでない先生がいます。良くない先生に当たったという時は他の親と一緒に要望を伝えるべきです。

神内 各学校に特色があり、校長先生の交代でそれが変わることもあります。

牧野 先進的な学校もあれば、伝統的な学校もあり、学習を重視する所もあるし、宿題を廃止した学校もあります。

質問3 人気の学校に入るには?

宮本 どこのゾーンに属しているか確認してから住む場所を決めた方がいい。K入学以降に引っ越しても転校の必要はありません。

神内 逆に人気校はゾーン内に住んでいても入れないこともあります。みんな引っ越して来るからです。

牧野 ゾーン内に居住しているか、兄弟がいるかで入りやすさの優先順位がある。同じ優先順位内ならくじで決まります。

質問4 良くない学区の救済策は?

神内 良くないといわれる学区では、宿題をしなかったり、授業中のうろつきが当たり前と認識されたりします。

牧野 成績が悪くても皆と同じだからいいと考える傾向もあるようです。

「Gifted and Talented(GT/テスト成績上位の子が集まる特別教育プログラム)と「アンゾーン・スクール」(ゾーンに関係なく入れる学校)、「チャータースクール」(州や学区の認可を受けて公費で運営される学校)などの選択肢もある。ただし、とにかく自分の子に合った学校に行き、良い友達を作ることが一番」

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