山田哲人復活の鍵は青木宣親にあり 前監督の真中満氏が見る“存在価値”

ヤクルト・青木宣親と山田哲人(左から)【写真:荒川祐史】

山田を二塁にコンバートした真中氏「バッティングが活きたと思う」

 昨年、球団史上ワーストの96敗を喫し、セ・リーグ最下位に沈んだヤクルト。しかし、今シーズンは2位に躍進した。昨年は打率.247、24本塁打、14盗塁とスランプに陥った山田哲人内野手が復活。打率.315、本塁打34、33盗塁と、自身3度目となるトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成する活躍を見せたことも大きかった。2015年から昨年までチームを指揮した真中満氏は、山田の復調には、メジャーリーグから復帰した青木宣親外野手の存在が大きかったと説明する。

 山田の才能を“開花”させたのは、他でもない真中監督だ。履正社高から強打の遊撃手として鳴り物入りで入団した山田を2軍監督時代の2013年に二塁手にコンバート。課題だったスローイングの不安がなくなったことで精神的な負担も減り、山田は圧倒的な打力を生かせるようになった。真中氏は当時をこう振り返る。

「コンバート(したの)はショートができなかったからです。山田はスローイングが得意じゃなかった。ショートだと(通用するまでに)3、4年かかったと思います。セカンドだったら2、3年目でいけるかなという判断でセカンドに回しました。ショートは難しい。スローイングが完璧じゃなきゃいけない。山田にはそこまでの肩の強さと、スローイング能力がない。セカンドに行ったことによって、バッティングが活きたと思います。(元々)バッティングはよかったので」

 強打の二塁手として才能を開花させた山田は2014年に日本人右打者のシーズン最多記録となる193安打をマークして大ブレーク。さらに、2015年は打率.329、100打点、リーグトップの38本塁打、34盗塁でトリプルスリーを記録。2016年も打率.304、38本塁打、30盗塁で史上初となる2年連続トリプルスリーを達成した。

2017年までヤクルト監督を務めた真中満氏【写真:荒川祐史】

「今まではどうしても『山田=ヤクルト』というイメージがあった」

 しかし、2017年は全143試合に出場しながら、打率.247、24本塁打、14盗塁、78打点と極度の不振に。チームも最下位に沈んだ。今季、そんな山田の負担を取り除いたのが、青木の復帰だったと真中氏は指摘する。7年ぶりに日本球界に戻ってきた青木はリーグ4位の打率.327の成績を残し、チームに貢献。その存在感がチームに与える影響も大きかったというのだ。

「打率を見れば、戦力として凄く貢献していることはわかります。でも、そこだけじゃない。今まではどうしても『山田=ヤクルト』というイメージがあり、彼が背負う部分が大きかった。でも青木が戻ってくることによって、若干山田の注目も薄れます。青木がいることで、山田にはメンタル的な影響も大きかったと思います」

 また、相手投手のマークが分散したことが好成績につながったと見ている。

「青木をマークしなくてはいけないので、山田へのマークがかなり薄れる。今年は山田らしく、自分のペースで野球ができたのだと思います。今年調子が良かったのは、その部分が大きいと思います」

 今年のヤクルトには山田、青木以外にも、雄平外野手が打率.318、坂口智隆外野手が打率.317をマークし、3割を超えるバッターが4人いた。また、ウラディミール・バレンティン外野手も38本塁打、リーグ断トツの131打点と復活。バレンティンが青木と楽しそうに会話する場面も多く見られた。その存在は間違いなく大きかった。

 クライマックスシリーズでは惜しくもレギュラーシーズン3位の巨人に敗れたが、ヤクルトは来シーズンも打線の好調を維持し、広島の連覇を止めることはできるのだろうか。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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