「社内に不満鬱積」「ブランド、何だったのか」日産社員ら

 「まさか、想像もできない」。日産自動車のカルロス・ゴーン代表取締役会長が逮捕された事件に社員らは動揺を隠さず、OBらも衝撃を受けた。

 「ゴーン氏の権力欲と報酬に対する不満は、以前から社内に鬱積(うっせき)していた」。ある社員が明かす。ゴーン容疑者は駆け足で経営トップに上り詰め、報酬も巨額になっていった。「経営陣にもゴーン氏の反対勢力はいた。ごう慢に耐えかねて反旗を翻したのではないか」と、この社員はみる。

 経営危機に陥った日産にルノーから派遣されたゴーン容疑者は「コストカッター」として大なたを振るい、日産を再建させた。一方でその豪腕ぶりには「ワンマン」との不満も根強かった。50代の男性社員は事件を冷ややかに受け止める。「長期政権は独裁に陥り、必ず腐敗する、という教訓だろう」

 グループ会社で働く管理職の40代男性は「現場の気持ちが総崩れになるような話。上は下に(コンプライアンスなどの)号令を掛けられなくなる。現場の皆は口に出さないだろうが、『上があんなことをやっているくせに』となってしまう」と今後を懸念する。

 さらに「ゴーンさんはかねて『ブランド、ブランド』と、ブランドが一番大事だと言ってきた。その言葉は、いったい何だったのか」と戸惑った口ぶりで話した。

 OBも憤る。元追浜工場従業員の男性は「こんなこと許されない。トップの人間の金銭面の不祥事なんて、とても恥ずかしい」。

 元横浜工場従業員の男性は、ゴーン容疑者の逮捕容疑が報酬の過少記載だったことについて「けちくさいな」と苦笑し、「事実なら、とんでもない」と突き放した。

ゴーン氏が会長を務める日産自動車本社=19日午後6時すぎ、横浜市西区

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