日産・西川社長会見詳報(1)「ゴーン統治の負の遺産」

 日産自動車(横浜市西区)のカルロス・ゴーン代表取締役会長の逮捕を受け、19日夜、同社で西川広人社長が行った会見の主なやりとりは以下の通り。

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 当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について内部通報を受けて、監査役からの連絡を受け重大な不正があった。大きくは三つを確認した。数カ月間にわたり、当社代表取締役会長カルロス・ゴーンおよび、代表取締役グレッグ・ケリーを巡る不正行為について内部調査を行ってまいりました。

 その結果、両名は開示されるカルロス・ゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたことが判明いたしました。

 そのほか、カルロス・ゴーンについては、目的を偽って当社の資金を私的に支出するなど、複数の重大な不正行為が認められました。

 グレゴリー・ケリーがそれらに深く関与していることも判明しております。当社は、これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力してきた。引き続き今後も協力していく所存です。

 内部調査によって判明した重大な不正行為は、明らかに両名の取締役としての善管注意義務に違反するものでありますので、最高経営責任者(西川社長)において、カルロス・ゴーンの会長および代表取締役の職を速やかに解くことを取締役会に提案いたします。またグレゴリー・ケリーについても同様に、代表取締役の職を解くことを提案いたします。

 このような事態に至り、株主の皆さまをはじめとする関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを深くおわび申し上げます。

 早急にガバナンス、企業統治上の問題点の洗い出し、対策を進めます。

◆3つの不正行為

 会社として断じて容認できる内容ではなく、専門家からは重大な不正行為であると言われていることから、解任の提案をすることを決断しました。

 正式には22日に代表、会長職を解くを提案、私が取締役会を招集して行う。

 当該の2人はすでに今夜逮捕されているようです。

 事案の詳細について私から話せることには限界があります。事案を当社から検察当局に連絡し全面的に協力しながら進めております。捜査の進展については申し上げられない。

 株主、関係者に迷惑を掛けたことを会社の代表としておわびしたい。会社として不正の除去、当局への全面協力、ガバナンスへの認識、こうした問題点を猛省すべきであると考えている。抜本的に速やかに対応していく。

 それ以上に、これまでゴーン率いる日産として、株主や取引先の信頼を裏切ることになってしまった。残念で申し訳ない気持ちでいっぱいです。

◆今後の進め方

 本年度からルノーに任命された取締役のほか、純粋な外部に2名お願いしている。取締役会から独立した2人と第三者委員会を立ち上げ、要因を掘り下げてガバナンスの見直しにつなげるアクションを取りたい。

 当社に限ってみれば執行体制の面で大きな影響はないと思っている。

 執行体制の面では、今後さまざまな変更が必要であればすみやかに断行していく。ルノー、三菱とのパートナーについても変更、調整が必要なら三者で調整し実行していく。

 今回の事案はルノー会長兼CEO、三菱の会長でもあるゴーンの逮捕、収監された。ルノーへの影響は大きい。

 重大な不正の除去であって、三者のパートナーシップに影響を与える事案ではない。緊密に連携して混乱を収拾し、事業運営とアライアンスに影響が出ないようにする姿勢が大事。

 将来に向けては、極端に特定の個人に依存した形から抜け出して、サスティナブルな形にパートナーと相談し、見直しのいい機会になる。

 その方向でルノー、三菱CEOとの話を進めている。

 ガバナンス(企業統治)の問題が大きい。あまりにもひとりに権限が集中していたのが誘因だ。そこも第三者委員会で掘り下げたい。

 最後に一点。ここで言うべきことか分からないが、本事案で判明したゴーンの不正、長年にわたる統治の負の側面だということは認めないといけない。一方で、将来に向けて積み上げてきたものもたくさんある。

 (これは)個人に帰するものというよりは、従業員が努力して積み上げた90年代の苦労の時代、従業員、家族、取引先が大変苦労し、その結果、2000年以降のリカバリーあった。

 その努力の結果、結晶をこの事案で無にせず、守れるところは守っていきたい。ここは皆さんにもご理解いただきたい。

 将来に向けて受け継いでいくべき財産と、ゴーン統治の負の遺産として精算、修正すべき点とがある。

 一人に権限を集中しすぎた。取締役会での議論や、そのほかに事業運営に関して明確に手を打っていきたい。

 事案について詳細に伝えられず申し訳ないが、(検察の)捜査の関係があるのでご勘弁を。

会見に臨む西川社長

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