『家族のはなし』 ベタだと分かっているのに、最後には大号泣

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 鉄拳の同名パラパラ漫画を映画化した作品。父親との確執を抱えた主人公の青年が、様々な挫折を味わいながら、家族の絆を見つめ直す様子を描きます。過去に経験した大きな挫折をきっかけにできた、父親との溝をいつまでも埋められずにいる主人公の拓也を演じるのは岡田将生。寡黙で優しく、リンゴ農家一筋の実直な父親を時任三郎が演じています。

 大学生になって親の仕送りをもらいながらも、反抗期真っ盛りのような主人公には、ちょっと成長しなさいよ! と、ついイライラしてしまう一方で、思わず苦笑いしてしまったのは、そういう私もアラフォーなのに両親にはつい甘えて、未だにひどい態度を取ってしまう時があるから。ついきつく親に当たってしまう拓也には、なんだかんだと共感するところがたくさんありました。

 息子にひどい言葉をかけられても、寂しそうに笑う不器用な父親を演じる時任三郎の演技は本当に素晴らしく、背中を見るだけで涙が出そうになるほど切ない! 原作のパラパラ漫画は見ているだけで大号泣で、こんなベタなものを映画化したところでお涙頂戴のドラマになるだけでしょ! なんて、意地悪な目で観ていた私は、絶対泣かない!とタカをくくっていたのですが、ラストシーンでは嗚咽が出るほど大泣きしていました。それは二人の役者が、パラパラ漫画のキャラクターにさらなる人間味を加えた結果と言えるでしょう。

 父親と息子の関係を描いた映画はハリウッドにもたくさんありますが、「愛しているよ」なんて言葉がいらない絆って日本特有で、素敵なんだよなあと改めて感じました。★★★★☆(森田真帆)

11月23日(金)から全国公開

監督:山本剛義

原作:鉄拳

出演:岡田将生、時任三郎、財前直見

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