長崎市長、住民投票に「反対」 MICE施設 意見書付け議会提案へ

 長崎市は19日、市民グループが請求したMICE(コンベンション)施設整備の是非を問う住民投票条例案を27日開会予定の定例長崎市議会に提出すると発表した。田上富久市長は記者会見し、施設の必要性と事業が頓挫した場合のリスクを理由に挙げ、条例制定に「反対」する意見書を付けることを明らかにした。今のところ長崎市議会でも条例案は否決される公算が大きい。

 施設は総事業費216億円を投じてJR長崎駅西側に整備し公設民営とする。隣接地での民間によるホテル開発などと合わせて3年後の開業を予定している。

 田上市長は、交流人口拡大による経済活性化のために必要な施設だと改めて強調した。その上で議会の審議を経て事業契約を結んでおり、仮に頓挫すれば事業者から多額の損害賠償を請求される可能性に加え、市の社会的信用も失いかねないとして「しっかり進めないといけない」と述べた。

 条例制定を請求した市民グループ代表で社会福祉法人理事長の吉富博久・元市議は「民主政治はどこに行ったのか。怒り以外にない。財政が厳しい中、MICE施設は造るべきではない」と語った。条例案は、長崎市議会環境経済委員会で集中的に審議し、その中で吉富氏も意見を述べる。

 田上市長が市民から住民投票の条例制定を請求されたのは2016年以降で5回目。市公会堂存廃などが焦点だった過去4回を含め、全て反対している。

 市長が掲げる「市民力」との整合性を記者会見で問われると「いろんな意見があるのは事実だが、住民投票イコール(市民力)と単純化できない。市民力は暮らしやすく魅力的なまちをつくる源泉であり、今後も市民の声を吸い上げる工夫をしていきたい」と語った。

住民投票に反対する理由を語る田上市長=長崎市役所

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