「日産自動車グループ国内取引状況」調査

 11月19日、日産自動車(株)(TSR企業コード:350103569、法人番号:9020001031109、横浜市西区、東証1部)のカルロス・ゴーン会長が、東京地検に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕された。同会長はフランスのルノーや、三菱自動車工業(株)(TSR企業コード:290569729、法人番号:7010401029044、東京都港区、東証1部)の会長を兼務していた。
 東京商工リサーチ(TSR)は、日産自動車と同社グループ(以下、日産自動車グループ)と直接取引のある1次取引先、間接取引の2次取引先を調査した。取引先総数は仕入先合計が1万1,534社(重複除く)、販売先合計は4,042社(重複除く)だった。
 日産自動車グループと直接取引のある1次仕入先(2,997社)は、製造業が1,312社(構成比43.7%)と4割を占めた。1次仕入先の本社地は、トップが東京都で803社(同26.7%)、2位が本社のある神奈川県で574社(同19.1%)と、2都県で全体の4割を占めた。日産自動車グループと直接取引のある1次仕入先は5割、1次販売先は6割が関東に集中している。
 また、資本金1億円未満(個人企業を含む)の中小企業は、1次仕入先が2,997社のうち、2,379社(構成比79.3%)。2次仕入先9,315社のうち、6,302社(同67.6%)と大半を占めた。
 日産自動車は2017年9月に完成検査に係る不適切取扱いが発覚し、2018年7月にも自主点検の完成検査時の排出ガス測定でも不適切な行為が判明した。そして、今回の相次ぐ不祥事で海外からも動向が注目されている。

※本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、日産自動車および同社グループの仕入先、 販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分け、業種、地区、規模などを抽出、分析した。
※1次取引先は直接取引のある取引先、2次取引先は1次取引先と直接取引がある間接取引企業を示す。
※日産自動車のほか、2018年3月期の有価証券報告書に記載されている国内連結子会社16社、持分法適用会社2社の合計19社を対象とした。

日産自動車グループの取引先 1次販売先の最多業種は自動車(新車)小売業

 日産自動車グループと直接取引の1次仕入先は2,997社。産業別では、最多は製造業の1,312社(構成比43.7%)。以下、卸売業609社(同20.3%)、機械設計業や労働者派遣業のサービス業他504社(同16.8%)と続く。
 製造業(1,312社)を業種別にみると、自動車部分品・附属品製造業が260社(構成比19.8%)で最多。次いで、金属用金型・部分品・附属品製造業が65社(同4.9%)、金属プレス製品製造業が44社(同3.3%)、アルミ・同合金プレス製品製造業と金属工作機械製造業が各37社、機械工具製造業が36社、ロボット製造業が29社の順だった。
 2次仕入先は、1次仕入先の3.1倍の9,315社あった。産業別の最多は、製造業の4,486社(同48.1%)。次いで、卸売業2,809社(同30.1%)で、この2産業で約8割を占めた。
 販売先では、1次販売先は1,547社、2次販売先は2,767社だった。産業別の最多は、1次販売先が小売業421社(同27.2%)、2次販売先がサービス業他593社(同21.4%)だった。
 販売先の業種別では、1次が自動車(新車)小売業333社(同21.5%)、自動車一般整備業186社、一般乗用旅客自動車運送業156社の順。2次は自動車(新車)小売業197社(同7.1%)、自動車部分品・附属品製造業138社、一般貨物自動車運送業127社。

日産自動車グループ産業別

日産自動車グループ取引先の本社地 1次仕入先トップは東京都803社

 日産自動車グループの取引先を本社所在地でみると、1次仕入先の最多は関東の1,648社(構成比54.9%)。以下、中部647社(同21.5%)、近畿340社(同11.3%)と続く。
 一方、1次販売先の最多は、関東の986社(同63.7%)。次いで、近畿166社(同10.7%)、中部128社(同8.2%)と続く。
 都道府県別では、1次仕入先の最多は東京都803社(同26.7%)。次いで、神奈川県の574社(同19.1%)、愛知県の382社(同12.7%)、静岡県と大阪府の各177社の順。
 1次販売先は、東京都と神奈川県が各384社(構成比24.8%)で最も多かった。以下、大阪府の85社(同5.4%)、愛知県の70社(同2.5%)、山梨県の67社と続く。
 本社、横浜工場、追浜工場、多くのグループが存在する神奈川県は、1次仕入先で2番目、2次仕入先で4番目、1次販売先で1番目、2次販売先で2番目に取引先数が多い。
 日産自動車九州(福岡県苅田町)など基幹工場のある九州は、仕入先が少ない。これは、間接的に取引している企業が多く、複層的なサプライチェーンが形成されているため。

日産自動車グループ地区別

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 日産自動車は、2017年9月の完成検査の不適切取扱い、2018年7月の完成検査時の排出ガス測定での不適切な行為などの不祥事が相次ぎ、今度はカリスマ経営者のカルロス・ゴーン会長が逮捕された。
 ゴーン会長は、役員報酬額1億円以上の開示が始まった2010年3月期から毎期、高報酬を受取り、株主総会での報酬額公表が恒例となっていた。ゴーン会長は就任直後から苦境に陥っていた日産の業績をV字回復させ、一部の株主からはゴーン会長の報酬額が低いとの声もあがっていた。
 グローバルでコンプライアンス(法令順守)が問われている。今回のゴーン会長の逮捕が日産の経営にどれほどの影響を及ぼすかは、まだ未知数だ。司法取引の陰に隠れた部分が、中小企業の多い取引先にどう影響するのか。今後の捜査の進展に目が離せない。

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