地元クラブ指揮「最高だった」 高木監督退任会見

 今季限りでの退任が発表されたサッカーJ1、V・ファーレン長崎の高木琢也監督(51)=南島原市出身=が20日、練習終了後に諫早市内で記者会見を開き「育ったまちのチームを率いることができ、これ以上ない最高な瞬間だった」と6年間の監督生活を振り返った。
 J2に昇格した2013年に就任し、17年に2位でチームをJ1の舞台へ導いた。J1初年度の今季は現在最下位でJ2降格が確定している。在籍6年はチーム歴代最長で、自身としてもV長崎が最も長く率いたJクラブになる。
 J2降格が決まった17日に契約満了が伝えられたという。1時間に及ぶ会見で、高木監督は「この結果は自分の責任なので、(退任は)自然な流れ。下位チームの監督が代わる中、最後まで任せてもらえて感謝している」とクラブ側の決断に理解を示した。1年でのJ2降格には「最低2、3年(J1に)定着しないと体力、戦術、個の力の成長は難しい」と悔しさをにじませた。
 印象に残っている試合として、J1昇格を決めたホーム讃岐戦(17年11月11日)、J2のホームデビュー戦となったG大阪戦(13年3月10日)、満員のスタジアムでJ1残留を争ったアウェー鳥栖戦(18年11月4日)を挙げた。
 
 高木監督の記者会見での一問一答は以下の通り。
 -契約満了を受けて。
 この結果で「やりたい」とは言いづらい。自分の責任なので自然な流れ。僕自身が選手に求めたように、クラブ自体も変化や進化が必要なので。
 最後は残念なシーズンに終わったけれど、節目として素直に受け止めた。下位チームはシーズン途中に監督を代える中、最後まで任せてもらって感謝している。
 -在籍6年。地元クラブとしてプレッシャーもあったのでは。
 生まれ育ったまちのチームを率いることができ、最高の瞬間だった。それ以上にこのチームを上昇させなければという使命感があった。当初はどういうサッカーをすべきか葛藤していた時期で、かなりチャレンジする中で方向性が見えてきた。サッカー人としていろんなことを学んだ6年だった。
 -昨季はJ1昇格に導いた。
 J1の舞台を長崎の皆さんに見せられた。古里の親にだけは嫌な思いをさせたくなかったので、それも含めて最低限はやれたかなと思う。
 ただ、新参者がJ1の流れやジャッジに慣れ、本当の意味でクラブの体力、戦術、個の力が定着するのには最低2、3年かかる。J1に上がって初めて分かることがある。その違いを経験できた。長い目で見たときに、この経験が必ず生きる。
 -例年ならJ1に残留できる勝ち点を積み上げた。
 もし低い争いになっていれば、それに応じたサッカーになってもっと早く降格が決まっていたかもしれない。これだけ勝ち点が上がると自分たちも必死にやる。マイナスなことではない。
 -昨季は経営難が騒がれる中で試合に臨む時期もあった。
 選手の後ろには家族もいる。最前線で頑張っていかないとすべてが崩れてしまう。「家族のためにやってくれ」と伝えて、体現した選手たちは立派だった。
 -今後について。
 V長崎でサッカー人としてのエネルギー、もっともっとやりたいという力が湧いてきた。自分自身を信じてチャレンジしたい。頭と体を維持し、この仕事をやり続けられる指導者でありたい。
 -ファン、サポーターへメッセージを。
 人として、サッカー人としていろんなものを学べた6年間だった。いいときも悪いときも本当に温かく、ファン、サポーター、県民の皆さまの力をいただいて6年を終えられる。言葉では言い表せないくらいの感謝がある。最後の2試合は最高だねって言えるゲームをしたい。
 チームを去った後はV長崎のファンの一人として見守っていく。どうかこれからもV長崎を支えていただいて、できるのであれば、いつか皆さんと一緒に応援したい。
 
 ◇ファン 「降格よりショック」
 J2降格、高木監督の退任が決まり、オフを挟んで初めての公式練習。選手たちを後押ししようと、諫早市サッカー場には50人以上のサポーターらが駆け付け、練習を見守った。
 J2に初参戦した2013年からのファンという女性(28)は「監督の退任は降格よりショック」と声を落とした。何度も練習を見学に訪れている男性(67)は「いつもより声が出てない。元気がないように見える」と印象を語った。
 練習後、選手を代表して高杉主将が記者会見に応じた。降格については「自分たちの力不足。申し訳ない」と悔しそうな様子。6年間一緒に戦ってきた高木監督については「戦力外で来た自分をここまで持ってきてくれた。長崎スタイルは監督がつくってくれた。個人としても、チームとしても感謝している。最後2試合勝ってから、もう一度お礼を言えたら」と心境を語った。

「6年間応援してくれたサポーターに最大限の感謝をしたい」と話す高木監督=なごみクラブハウス

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