段ボールを財布に再生 アーティスト島津冬樹の映画が完成

 捨てられてしまう段ボールを拾い集め、財布に再生する。リサイクルを通り越し、新たな価値を創造する“アップサイクル”を実践するアーティスト島津冬樹の活動を描いた映画が完成した。タイトルは「旅するダンボール」。

作品を持つ島津冬樹

 

 島津は1987年、神奈川県生まれ。多摩美術大で情報デザインを学んだ。段ボールとの出合いは偶然だった。使っていた財布がボロボロになってしまったのだが、新品を買う金が無い。窮余の一策で段ボールで財布を作ったのが始まりだった。

 以後、学園祭などで段ボール製の財布を販売すると評判に。大手広告代理店に就職したが、段ボールへの愛はやまず、アーティストの道に踏み切った。作品のクオリティーは高く長財布には札入れ、小銭入れ、カード入れが付いていて実用的だ。

 段ボール箱には、中の品物を表現するためさまざまなイラストやロゴで彩られている。そのデザインをうまく生かして作品にするのも技の一つ。

 

 これまで30カ国を旅して段ボールを集めてきた。タイの段ボールはオレンジ系で一目で分かる。農業大国オーストラリアは世界にアピールするためデザインに凝っている。富山では医薬品、京都では京野菜と、土地土地の特徴があるのが分かる。

 映画では、鹿児島・徳之島産のジャガイモの段ボールのデザインに引かれ、そのルーツをたどる旅に出る。その過程で明らかになるのは、商品が流通する社会構造や、印刷・製版の技術革新、そして一人のデザイナーの人生の物語だ。旅の最後は感動的。ここでジャガイモの段ボールで作った財布が大切な役回りを果たす。現代美術のお手本のような構造だ。

島津冬樹の段ボール製財布作品

 

 「旅するダンボール」は岡島龍介監督。12月7日からYEBISU GARDEN CINEMA、新宿ピカデリーほか全国順次公開。

 (47NEWS 中村彰)

 

 

 

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