転売繰り返す「循環取引」 食品会社元役員を逮捕 県警

 架空の取引を主導して横浜市の中堅食品会社から約1億円をだまし取ったとして、県警捜査2課と泉署は21日、詐欺の疑いで、この会社の元役員で卸売会社社長の男(48)=相模原市中央区東淵野辺=を逮捕した。複数の会社間で帳簿上だけ商品の転売を繰り返して利ざやを得る「循環取引」の手法が使われており、食品会社の損失は数億円に上る可能性があるという。

 逮捕容疑は、2014年1月中旬ごろ、自身が経営する卸売会社を含めた複数の会社を架空の転売行為に関与させ、食品会社から約1億500万円をだまし取った、としている。同課によると、同容疑者は「卸売会社で事業に失敗し、借金を返済するためだった」などと供述、容疑を認めている。

 同課によると、循環取引は10年6月~14年1月に行われていた。卸売会社社長と食品会社役員の双方の地位を持つ同容疑者が画策し、5社余りを誘い込んだとみられる。取引に参加した会社は、仕入れ額より高値で架空の商品を転売することで利益を得ていた。一巡して当初の販売価格より高値で商品を買い戻すことになる卸売会社は、さらに高額の別の商品を販売する形で差額をもうけ、循環が途絶えることのないようにしていた。

 こうした循環は約3年半で数十回に上ったとみられ、当初200万円強で始まった取引価格は1億円近くに膨れ上がった。14年2月に食品会社の内部調査で不正が発覚。同社が損失をかぶる形で循環を打ち切り、15年6月に告訴した。

循環取引のイメージ

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