城から読み解く真田家 異色の歴史書出版

城から読み解く真田家 異色の歴史書出版

 堀や地形を含めた城郭のジオラマ、「城ラマ」を製作している「城郭復元マイスター」の二宮博志さん(47)が、初の著書となる「真田三代 名城と合戦のひみつ」(千円=税別、宝島社)を出版した。巧みな戦術と知恵で戦国の乱世を生き抜いた名家の魅力を、城という切り口から読み解いた異色の歴史書だ。

 執筆のきっかけは「売り込み」だった。「来年のNHK大河ドラマが真田家なので、各出版社から本や雑誌が出る。その付録としてうちが作った真田家の『城ラマ』はどうかと各社に営業に行ったんです」。答えはいずれもノー。1万円超の城ラマをいくら簡易化しても数千円はかかる。費用的に無理だと断られた。

 しかし、意外なオファーが舞い込む。宝島社から「真田氏の本を書きませんか」と言われたのだ。「真田家の歴史書はいくらでもある。ただ、城から切り取るのは新しいと思った」 OA機器部品メーカー、パートナー産業(横浜市港北区)の社長でもある二宮さんの「城哲学」は、何より現場第一主義。真田家の城は未訪問のものはもちろん、時間の許す限り再訪もした。「現地に行かないと、坂の角度とかも分からないから」。ジオラマ製作で培った地図と資料を使いこなして復元していく過程に、自らの足で稼いだ「生の感覚」を落とし込み、真田家が築いた城や合戦場をひもといた。

 真田氏は武田信玄ら周辺の強国をはじめ織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ら天下人と渡り合い、戦国を生き抜いた名家として知られる。著書では幸綱、昌幸、幸村の「三代」の城を中心に語られる。

 「三代に共通しているのは自分自身の生き方を貫く覚悟。どんな名城もそれを使う城主の能力、思いがあってこそ。そういう部分が伝わればうれしいし、何よりこの本を手に真田家の城歩きをしてみてほしい」 徳川家の大軍を2度も押し返した上田城は、城ラマとして来年発売予定だ。

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