源田の守備に驚き「難しい打球が飛んでも、なぜかそこにいる」
2016年の都市対抗野球大会、2017年の日本選手権で優勝し、社会人野球の名門として知られるトヨタ自動車。今年のドラフトでは富山凌雅投手がオリックスから4位指名を受けたが、2016年にはドラフト3位で西武に源田壮亮内野手が、2017年にはドラフト2位でロッテに藤岡裕大内野手が入団した。そして、源田が2017年に新人王を獲得すると、藤岡はプロ1年目の今季全試合出場を果たした。プロの舞台でも即戦力として存在感を見せる両選手は、どんな社会人時代を過ごしていたのか。2016年からチームを率いる桑原大輔監督に聞いた。
源田は愛知学院大からトヨタ自動車に入社。桑原監督は源田のプレーを見た時、守備のうまさに驚いたという。
「足が速いのは知っていたのですが、守備も素晴らしかった。トヨタに入ってからも練習後に必ずコーチのノックを受けて、守備力の向上に努めていました。難しい打球が飛んでも、なぜかそこにいる。事前の予測にも長けているんだと思います」
西武では2番を任されているが、トヨタでは9番を打っていた。しかし、バッティングが劣るとは思っていなかったと話す。
「トヨタでもいいところで打っていました。社会人野球は負けたら終わりの大会が多い。チーム事情で打順を組んでいます。足が速いので塁に出てもらうため、セーフティーバントの指示もよく出していましたが、本当にうまいのでチームの勝利に貢献してくれていました」
源田は2017年に新人王を獲得し、今シーズンはゴールデングラブ賞も受賞。さらにプロ1年目の開幕戦からフルイニング出場を続けている。その能力を熟知する桑原監督でさえ、ここまでの活躍は予想していなかったと驚きを隠せない様子だ。
「もともと体は強かったですが、連続でフルイニング出ているということはすごいですね。プロは、怪我で試合に出られないことが一番辛いはず。怪我をしないことは、とてもいいことだと思います。これからも記録を伸ばしていってほしいと思います」
勝負強さ持つ藤岡は指名漏れの悔しさバネに成長
一方の藤岡もルーキーイヤーの今年、全試合出場を果たした。亜細亜大ではプロ志望届を提出したが指名漏れを経験。悔しい思いをバネに成長を遂げ、社会人を経てプロ入りを掴んだ。
「入った時はもう切り替えて一生懸命やってくれていましたが、プロに行きたいという思いは人一倍強く持っていると感じました。プロでやりたいということは入る時から聞いていましたし、普段の会話の中でも感じ取ることができました」
ロッテではショートを任されているが、トヨタではショートに源田がいたため、1年目は外野の守備に就いていた。
「藤岡にはショートを守りたいという思いがあったのですが、チームには源田がいた。どうしたらいいのかなと考えていました。肩が強いので、外野で出た方がいいんじゃないかと思っていたのですが、自分から外野をやると言ってくれました。本人も、試合に出るためにはどこがいいんだろうと考えたと思います」
2017年の都市対抗開幕戦では、タイブレークで迎えた延長10回、1死満塁の場面でサヨナラ本塁打を放ち、チームを劇的勝利に導いた。
「そういうところで打てるのは、何か持っている。お前やってみろ、と言われてもなかなかできないですから。勝ちたいという思いが強いんだと思います。バントのサインを出しても、不服そうな顔を一切見せない。うまいかと言ったらそうでもないですが、練習もずっとやってくれていました」
今シーズンは全試合出場を果たしたが、打率は.230に終わり、プロの難しさを体験した。それでも、シーズンを通して戦ったことはいい経験になるとエールを送る。
「環境が変わった中で、さらにショートというポジションで大変だったと思いますが、全試合出場は来年につながる。経験だけで終わらせてはいけないけれど、1年間しっかりやれたことには自信を持って、次は成績も求めてほしいと思います」
今年のドラフトでは、社会人日本代表の経験もある富山がオリックスから4位指名を受けた。期待の左腕がプロの舞台へ旅立つが「OBのプロでの活躍はチームにもいい刺激になっています。明るい話題をこれからもチームに提供してほしいですね」と桑原監督は笑顔を見せる。源田、藤岡に続くプロの舞台での活躍を、3年間ともに戦った指揮官も楽しみにしている。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)