下関市立大経済学部の叶堂(かなどう)隆三教授(61)が、社会学の視点で、長崎の潜伏キリシタンとその子孫の移住や生活の変化を研究し、「カトリック信徒の移動とコミュニティの形成」「『山の教会』・『海の教会』の誕生」の2冊にまとめて出版した。離島や佐世保にも足を運び、約8年を費やして地道に調査。禁教期以後も信徒が住まいや仕事を変えながら活動的に信仰を守った様子を解説している。
叶堂教授は地域社会学が専門。斜面地に居住する住民の生活などをテーマに研究してきた。自らもカトリック信徒で、潜伏キリシタンの歴史に関心を持ち、2010年ごろから本格的な調査を始めた。
「カトリック信徒-」は江戸後期以後に、信徒が長崎の外海から五島列島や佐世保の黒島、平戸などへ移り住んだ社会的背景を分析。江戸幕府の禁教令から逃げることが主な目的とされるが、外海では人口が過剰に増えていた状況もあった、と指摘している。さらに、各地へ移った信徒の子孫が、時代に合わせて居住地や仕事を変えていく状況を詳細にまとめている。
「山の教会-」は、信徒が移住先で形成したコミュニティに着目。その中心となる教会の移り変わりを、現地を巡って調べ上げた。
世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、幕府による弾圧や迫害にさらされながらも信仰を守り続けた信徒の営みが、独特の文化的伝統と評価された。叶堂教授は「(禁教令が解かれた後も)信徒は同じ場所でじっと信仰を守り続けたという印象を持たれているが、実際はダイナミックに開拓を続けていた。2冊の本で隠れた事実が立体的に見える」と話す。
「カトリック信徒-」は450ページで8640円。「山の教会-」は246ページで4104円。いずれもA5判。書店やネット通販「アマゾン」などで購入できる。
