経験は生きる

 競争がものすごい。半年ほど前に聞いた講演で、Jリーグの村井満チェアマンはそう語った。プロサッカーリーグのJ2のチームは、J1昇格に燃えて実に激しく競い合う。世界中のサッカーリーグでも例を見ない、と▲資金力があっても昇格は並大抵のことではない。それでも勢いづいて上がるチームもある。V・ファーレン長崎がそれだ、と話は続いた▲守りは堅く、一気に攻める。相手チームに走り勝つ。「堅守速攻」がV長崎の勢いの源なのに、J1では誤算もあった。例えば、ワールドカップでの2カ月ほどの中断を埋め合わせるため試合の日程が過密になって、走り勝とうにも体力が付いていかず-と運動部記者が先日の紙面で振り返っている▲ご存じの通り、V長崎は残念ながらJ2降格が決まり、在任6年の高木琢也監督(51)は今季限りで退任する。例年ならばJ1残留できるほどの勝ち点を積み上げた。無念は想像に余る▲会見で語った。「新参者がJ1の流れに慣れて、体力、戦術、個の力が定着するのには2、3年はかかる」。だからこそ、何とか残りたかったが、この経験は「必ず生きる」と▲きょうのアウェー戦を含め今季はあと2試合。高杉亮太主将は言った。「勝って、監督にもう一度お礼を言えたら」。経験を「必ず生かす」と誓いつつ。(徹)

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