再びのぼれサクラマス 愛好家が相模川に放流、復活願う

 相模川に高級魚サクラマスを復活させようと、神奈川県内の釣り愛好家団体が幼魚の放流を始める。サクラマスは渓流魚のヤマメが海に下って大きく成長し、再び川をさかのぼってきた魚。相模湖完成前は年間数トン単位の漁獲量があったとされるが、現在は相模川では極めて希少な存在だ。多くのサクラマスがさかのぼれば太公望たちにも大きく注目されるとあって、相模川漁業協同組合連合会(木藤照雄会長)もバックアップしている。

 サクラマス復活に思いをはせるのは釣り愛好家団体「キャッチ&クリーン」(本田行照会長、川崎市)。25日に厚木市厚木の三川合流点で幼魚約3千匹を放流する。

 県水産技術センター内水面試験場(相模原市緑区)によると、ヤマメの一部が春に海へ下り、翌年3月ごろから川をさかのぼって秋に産卵する。体長は50センチほどに成長するという。「むしろサクラマスの陸封型がヤマメといえる」と同試験場職員。

 キャッチ&クリーン発起人の小平豊さん(49)は、「サクラマスは山と川と海をつなぐ存在で、自然のシンボル」とサクラマス復活の意義を説く。

 同グループは相模川などのクリーン活動を続ける中で、相模川漁連傘下の中津川漁業協同組合と連携しながらサクラマス復活運動の準備を進めてきた。募金を呼び掛け、山梨県忍野村の養殖業者から仕入れる幼魚の費用を賄った。目印として放流魚のアブラビレという小さなヒレをカットし、来年、川をさかのぼるかどうかを調べる。

 サクラマスは福井県の九頭竜川、富山県の神通川、秋田県の雄物川などが有名。同試験場によると、太平洋側では神奈川県が南限とされる。

 相模川では本流に1947年に相模ダム、65年に城山ダム、支流の中津川にも2000年に宮ケ瀬ダムが完成し、サクラマスなどの魚がダムの上下を行き来できなくなった。中下流部にはいくつもの堰(せき)があり、魚道の一部は魚が通りにくい所もあるという。上流部で相模川漁連がヤマメを毎年放流しているものの、サクラマスの姿は極めて少ない。ただ、まれに、サクラマスとみられる魚が釣れることもあるという。

 小平さんは「サクラマスが遡上(そじょう)するようになれば、釣り人の間からものすごい反響があるだろう」と話し、相模川漁連も「若い世代が釣りに目を向けてくれるのでは。魚がさかのぼれる魚道の整備も必要だ」としている。

 同試験場では「放流してもすぐ翌年にサクラマスが遡上するとはいえず、長い取り組みになるので頑張ってほしい」とエールを送っている。

ヤマメ。体の側面にパーマークと呼ばれる楕円形の模様がある

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