【外国人介護士】育成には費用必要 介護産業輸出への投資

 海外からの人材を福祉の現場で活用するために必要な論点とは何か、淑徳大の結城康博教授に聞いた。

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 国境をまたぐ人の行き来にはお金がかかるという前提を理解する必要がある。移民政策を取るドイツでは研修などの費用は、国が公共サービスとして出している。コストをかけなければよい人材は育たない。介護は公共財だから、日本語やマナーの研修に公共政策として関わり、彼らが日本に適用するようにすべきだが、そうした費用の議論は避けられている印象だ。

 経済連携協定(EPA)の介護士受け入れの枠組みには国家が公共政策として関わっている。留学生を受け入れる学校法人は準公共的だし、横浜市や神戸市など自治体が関与する例もある。

 だが技能実習制度は完全に市場経済型だ。介護の質と研修生の人権の質の2種類を担保しなければならない。日本の国際競争力が下がっている今、いつまで日本の労働市場が外国人にとって魅力があるのかという議論も必要だろう。

 日本の介護は世界でトップの水準ではある。高齢化の進展でノウハウを磨き、スウェーデンやデンマークのレベルにも追い付いた。アジアの高齢化が進む今後、外国人介護士の受け入れは、彼らが帰国後に日本の介護を宣伝してもらうことにもつながる。アジア諸国が経済力を高めていく今後、日本の介護産業を輸出するための投資といえる。

 だからこそ外国人に対する人権無視のような扱いは許されない。外国人受け入れに際して、人員数のことしか考えない現場は成功しないだろう。

そもそも、日本人を含めスタッフを大切にする人事管理ができるかどうかが鍵だ。

 ゆうき・やすひろ 淑徳大卒、法政大院修了。社会保障論、社会福祉学。自治体で介護職や介護支援専門員などを経験。

淑徳大・結城康博教授

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