【平成の長崎】困ったイノシシ被害 生息地域拡大が原因? 平成16(2004)年

 イノシシによる農作物の被害が、今年も広がっている。人家近くまで出没するようになり、荒らされる家庭菜園の数も多くなっているという。農家からは駆除を求める声が上がっているが、規制などもあり、解決の糸口はつかめそうにない。
 北高飯盛町では、10月ごろから山間部付近でイノシシに農作物が荒らされるようになった。同町野中名の農業、中本さん(63)は「あっという間に被害が広がった。ジャガイモ畑がほぼ全滅した農家もある。畑の周りに竹さくを作ったが、効果がなかった」と話す。
 町経済課は原因を「周辺の市町からイノシシが休猟区に逃げ込み、生息地域が広がった」とみる。中本さんらは11月、収穫前の農作物を守ろうと「野中地区生産組合」を結成。町の助成を受け、電気さくを設置したところ、被害は治まっているという。
 有害鳥獣の駆除については法律で免許や時期などの規制がある。長崎市が認可取得した「長崎いきいき農業特区」では、イノシシなどの捕獲は従事者の中に網・わな狩猟免許を持つ人が1人いれば可能と規制を緩和している。市農林部は「免許を持たない農家も捕獲に参加できるようにした。自分の財産は自分で守ってほしい」と呼び掛ける。
 県によると、平成15年度のイノシシによる農産物被害額は約2億5000万円に上った。今年の被害額は現在取りまとめ中だが、被害を訴える農家は多いという。
 県自然保護課は「山間部で耕作地が放棄され、イノシシの生息に適した環境になっている。狩猟者も高齢化で数が減り、駆除も難しい」と説明。だが、農家の間からは「駆除して減らさなければ、被害は拡大するばかりだ」と、対策を求める声は高まっている。
(平成16年12月6日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

イノシシによる農作物被害を防ぐため設置された電気さく=飯森町野中名

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