【高校野球】指導役の球児が野球の楽しさ再確認 高野連が取り組む「キッズフェスタ」とは?

高校球児が未就学児に野球をレクチャー【写真:編集部】

高校野球200年構想事業の一環として企画された「キッズフェスタinつどーむ」

 北海道高野連が23日に札幌市のつどーむ(札幌コミュニティドーム)で未就学児を対象にしたイベントを初開催した。高校野球200年構想事業の一環として企画された「キッズフェスタinつどーむ」には、遠くは名寄市や幕別町など道内各地から3~8歳の142人(女子19人)が参加。当たっても痛くない柔らかいボールとバットを使って、キャッチボールやティーボール、野球ゲームなど2時間、汗を流した。

 野球人口の裾野を広げる取り組みだが、実は恩恵を受けたのは参加した子供たちだけではない。サポート役を務めた高校球児にも相乗効果があった。

「これはいい」と絶賛したのは、札幌光星高の合坂真吾監督だった。「違う一面を見ることができ、自分のチームの子たちを見直しました。子供たちを手取り足取り、飽きさせず。この子たち(高校生)の勉強になるので、うちの学校でもやりたい」と教え子が見せた現場での対応力に目を見張った。

 当日は札幌市内8校の野球部員とマネジャー160人が参加し、子供一人一人とペアを組んだ。受付終了直後から預かり、閉会式が終わって親の元へ連れて行くまで一緒に行動。走り回ったり、しゃがみこんだり、パンチをしたり、キックをしたりと予測不能な動きをする子供たちを相手に、目線を合わせて優しく語りかけたり、肩車をしたり、見事にあやしていた。親のところに戻りたいと泣き出す子供はほとんどおらず、企画した北海道高野連の横山泰之専務理事も「みんな生き生きとやっていましたね」と目を細めた。

高校球児が未就学児に野球をレクチャー【写真:編集部】

テスト3日前にも関わらず定員の20人は志願者ですぐに埋まる

 札幌日大高の森本卓朗監督も高校球児の行動力に驚いた一人。「子供をあやす自信がある人」を募ったところ、テスト3日前にも関わらず定員の20人は志願者ですぐに埋まったという。「最初は集まるか心配でしたが、選手たちは楽しそうにやっていました。選手にも良い経験になるし、子供たちも楽しむことができる。両方にとって意味のある良いイベント」と評価した。

 参加した高校生も楽しみながら大きな刺激を受けていた。札幌光星高の近藤尚矢主将は(2年)は「小さい子たちがとにかくかわいくて。一緒になって楽しめました」と笑う。無邪気にバットを振り、一生懸命ボールを追いかける。そんな子供たちの姿を見て、昔の思い出がよみがえってきた。「僕たちも野球が楽しくて始めた。明日からまた新鮮な気持ちで野球ができそうです」と話す表情には充実感がにじむ。2時間常に行動を共にしてすっかり仲良しになった子供と閉会式後には写真撮影をして笑顔で別れた。

 札幌日大高の大滝奏斗主将(2年)もこのイベントで野球の楽しさを再確認した。「自分たちが野球の楽しさを味わいながら、その楽しさを子供たちに伝えられたらと思って参加しました」と話す。4歳や5歳の未就学児に教えることは簡単ではないが「どう教えたらいいか、頭を使うし、コミュニケーションの勉強になりました」とさわやかに笑った。

 参加者のアンケートには「こうこうやきゅうのおにいちゃん、あそんでくれてありがとう」と用紙一面使って書かれた感謝の言葉もあった。高校球児にとっても未就学児にとっても有意義な一日となり、初めてのイベントは大成功。北海道高野連は来年も開催を予定している。(Full-Count編集部)

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