Scratch検定は子どもがプログラミングの達成感を味わえる:「ジュニア・プログラミング検定」主催者に聞く

LITALICOワンダー主催のワンダーメイクフェスミニで検定を開催したときの様子

パソコンやビジネス検定を手がける(株)サーティファイは、子ども向けのプログラミング検定「ジュニア・プログラミング検定」を主催しています。
ジュニア・プログラミング検定とはどのようなもので、なにを目的としたものなのか。そして、これからはじまる小学校プログラミングの必修化との関係はどうなるのかなどを、同社事業推進部マネージャの小林悠希さんに聞きました。

(株)サーティファイ事務推進部マネージャの小林悠希さん

達成感を味わえる検定試験

ジュニア・プログラミング能力認定試験は、ビジュアルプログラミング言語である「Scratch」の操作スキルを認定する試験。その目的は、腕試しと自分の到達レベルを確認することです。

サーティファイは、WordやExcelなどのパソコンを使った検定試験やビジネススキルの資格試験などを主催する企業です。小林さんによると、資格試験は就転職など、仕事と直結する目的で受ける人が多いのですが、WordやExcelなどを習得したあとに、どこまで身についたのかを知るために、こうした資格検定をとる人も一定数いるとのこと。とくにシニア層に多いそうです。

ジュニア・プログラミング検定は、そうした腕試し的な検定の位置づけであり、プログラミングを習得したという達成感が味わえるように設計されています。ジュニア・プログラミング検定がはじまったのは2016年12月。小学校高学年の子どもたちを中心に、すでに1800人が受験しています。

画像参照:https://www.sikaku.gr.jp/js/ks/

課題の成果物をつくる本格的な試験

試験は、Entry(4級)からGold(1級)の4段階。級によって、どこまでの知識を問われのかが違います(表1)。どの級の場合も「○○をつくろう」というテーマがあり、それを実際にScratchでつくるという問題が出題されます。「お手本ムービー」と呼ばれる完成形として見ることができ、その動きと同じものをつくるという試験です。

基準は60%以上の得点率で合格。「問題文(お題目)で与えられている条件を満たしたプログラムが組み込まれていること」以外に、「自由なアイデアが盛り込まれていること」も評価の対象となります。

「問題文で与えられている条件を満たしたプログラムが組み込まれているかどうか」は、単純に、その動作をするかという大雑把なものではなくて、30項目ぐらいの細かいチェックポイントがあるそうです。こうした細かいチェックポイントを設定しているのは、これまでさまざまな資格検定を手がけてきたサーティファイならではのもので、信頼がおけます。

お手本ムービーの例(Gold級の場合)

表1 ジュニア・プログラミング検定の内容

  • 級,Entry(4級),Bronze(3級),Silver(2級),Gold(1級)
  • 試験時間,30分,40分,40分,50分
  • 主な内容,単純な繰り返しや条件分岐ができる,変数や演算が使える,複数の制御ブロック、入れ子構造が使える,リストやクローンを使った複雑なプログラムができる
  • お題目の例,おいかけっこゲームをつくろう,レースゲームをつくろう,計算ゲームをつくろう,シューティングゲームをつくろう

取材では、実際に問題文の例を見せてもらいましたが、大人でも慣れていないとてこずるという印象を受けました。とくに厳しいのは、制限時間です。30~50分で作品を完成させる必要があるため、理解していないと得点するのは難しい気がしたのです。

ところが「これが本当に時間内に終わるか?」と小林さんに聞いたところ、「制限時間の半分ぐらいの時間でつくり上げる子もいる」とのこと。その優秀さに驚きました。

試験の対策と試験場

ジュニア・プログラミング検定は、全国、約440カ所のサーティファイ認定試験会場で受験することができます。パソコンスクールで学んでいる場合は、そのスクールが試験会場になっていることがありますし、スクールで学んでいなくても、一般の人も受験可能な会場もあります。

試験の開催頻度は、試験会場によって違います。頻繁に実施しているところもあれば、夏休みなどの節目タイミングで実施しているところなど、さまざまです。

LITALICOワンダー主催のワンダーメイクフェスミニで検定を開催したときの様子

試験の対策としては、FOM出版の「Scratchで楽しむ レッツ!プログラミング ジュニア・プログラミング検定 公式テキスト」が公式のテキストですが、ほかにもいくつかの一般的なスクラッチ書籍が、推奨教材として挙げられています。

子どもがやってみたいときが受験どき

こうした腕試しの性質をもつジュニア・プログラミング検定ですが、取材中に小林さんが「ジュニア・プログラミング検定は、あくまで目標にはなり得ると思うけれども、目的にはなり得ない」と言っていたのが印象的でした。

小林さんによれば、「検定は、学び続ける目標としてのひとつの選択肢に過ぎないので、強制的に受験はしてもらいたくない」とのこと。検定試験は、チャレンジする勇気や合格による自信が得られる一方で、不合格になった場合は、学びの意欲を奪うことになりかねないからです。

受験の秘訣は、ムリに勧めないこと。子どもは好奇心旺盛なので「こんなものがあるんだったら挑戦してみたい」とか「俺のプログラミング力、どれぐらいあるのか試してみたい」というタイミングが、検定の受けどきだそうです。

そしてまた、検定のメリットとして絶対評価であるということも付け加えていました。プログラミングの腕試しの場としては、検定以外にもさまざまなプログラミングコンテストがあります。しかしプログラミングコンテストは相対評価であり、入賞できる人はほんの一握り。人と比べて入賞や優勝が決まります。それに対して検定は絶対評価なので、人と比較することなく自分の実力が測れます。

試験の内容について説明する小林さん

小学校プログラミングの必修化について

さらに、これからはじまる小学校プログラミングの必修化についても、次のように述べていました。

「これからプログラミング教育が小学校で必修化されるので、プログラミングを今のうちに習っておかないと学校の教育についていけないかも、という不安をもつ親御さんもいると思うんです。でも小学校におけるプログラミング教育の目的は、プログラミング的思考を身につけることであって、プログラミングのスキルそのものを身につけることが目的ではありません。もし不安だからという理由で、プログラミング教育を今のうちに学ばせたほうがいいのかなって考えているのであれば、そのような心配をする必要はないと思います。

ただ一方でプログラミング教育は、とても価値があります。それは単に小学校でやるからという理由ではなく、プログラミングを学ぶことでいろいろなメリットがあるからです。たとえば一例ではありますが、私の小学6年生の息子はプログラミングをはじめたことで、自分で考えてわからないことを人に聞くのではなく、自分で調べて試行錯誤するようになりました。それで学びが自走するというか、誰の手助けもなく勝手に学びが進んで、スキルがどんどん上がっていくようになりました。

必修化かどうかではなく、プログラミングを身につけることで得られる、そうしたものに興味をもっている親御さんは、ぜひ子どもたちに学ばせてほしいと思います」

必修化かどうかではなく、プログラミングを身につけることで得られるものに注目してほしいとのこと

ジュニア・プログラミング検定を受験しよう

ジュニア・プログラミング検定を個人で受ける場合、「随時試験 実施会場」で受験できます。

全国180カ所以上の場所で随時試験を受けています。

検索すると、試験の開催日がカレンダーで表示されるので、そこから選択して申し込めば受験できます。会場によっては、開催日、申し込み期限などが違うので注意しましょう。

【随時試験 実施会場検索】

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サンプル問題は、無償で提供されています(https://www.sikaku.gr.jp/js/ks/sample)。試験前には、取り寄せて練習しておくとよいでしょう。

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