シンジャルのMSF支援病院で出産したハイファさん(28歳) © MSF
過激派組織「イスラム国」(IS)による性暴力を告発し、2018年のノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの故郷、イラク北部シンジャル地方。2014年8月からISに占拠され、国境なき医師団(MSF)の病院も破壊されました。
攻撃を免れた病院でMSFは診療を再開 © MSF
クルド人自治区の治安部隊によって2015年11月に奪還された後も住民の帰還が進んでおらず、40万人いた人口は10万人弱まで減少しました。現在、この地区に暮らす人の大半がイラクの少数派ヤジディ教徒です。
迫害を受けてきたヤジディ教徒。他都市での受診に抵抗感を抱く人も多い © MSF
「奪還作戦による戦闘で家もインフラも破壊され、医療者は県外へ避難しました。いまだ不安定な治安状況が続く地域もあり、病院はほとんど残っていません」と語るのは、MSFのプロジェクト・コーディネーター、モリス・N・ラムナプス。
MSFは廃虚となっていたシヌニ総合病院を修復し、イラク保健省との協力のもと、今年7月から再び診療を開始。この地域で特に不足している救急と周産期・新生児ケアから始めました。
救急科でレントゲン画像を確認するMSF医師ら © MSF
この地域にはISによる凄惨な暴力の被害者も多く、カウンセリングや精神科のニーズも膨大。2018年末の立ち上げを目指し、MSFはシヌニで心のケアもスタートさせる予定です。
MSFは1991年からイラクで活動。現在、1500人以上のスタッフが民族、宗教、性別、政治的信条に関わらず、全ての患者に質の高い医療を無償で提供している。MSFはアルビル、ディヤーラ、ニナワ、キルクーク、アンバルの5県と首都バグダッドで、産婦人科や慢性疾患の治療、戦闘負傷者の外科治療とリハビリ、心のケア、健康教育など、1次・2次医療に取り組んでいる。
ニナワ県シンジャル地方シヌニでは、2018年7月にシヌニ総合病院を復旧。救急科・産科を運営し、救急車での搬送も行っている。産科を再開以来、患者数は増え続け、現在は週25件の分娩を扱う。