【工場ルポ】〈アルミ加工のヒルトップ・ピンク色の夢工場、京都本社工場〉多品種・単品24時間無人加工を実現 主役の人「創造的な仕事に専念」

 ヒルトップ(HILLTOP、本社・京都府宇治市大久保町成手1―30、社長・山本正範氏)は、多品種単品に特化したアルミ加工メーカー。同社が京都府宇治市の京都フェニックス・パークに新社屋を竣工したのは2007年12月。建坪が100坪の5階建ての建屋。東側が全面ガラス張りで、コーポレートカラーのピンク色を大胆に配色するなど社屋は斬新。山本昌作代表取締役副社長は「中小企業こそ本社社屋に資金を投じるべき。人を育て顧客を生む拠点なのだから」と話す。〝ピンク色の夢工場〟を紹介する。(白木 毅俊)

 宮浜司製造副部長、製造部の津ケ谷祐太氏の案内で見学した。エントランスはフロアの上に石砂利と観葉植物がコンパクトに置かれている。一歩入った瞬間に、ヒルトップが通常のアルミ加工メーカーではないことが分かる。

 最初に見た3階はオフィスと「Foo’s Lab」などがある。オフィスは社員間のコミュニケーションを図るため室内の壁が取り払われ、机と椅子も機能的に配置されている。

 同社の売りは24時間無人加工、多品種・単品加工。これを実現可能にしたのが独自の「ヒルトップ・システム」だ。

 通常であればアルミ切削加工は職人の仕事で、素人が手掛けるのは難しい。だが、これまでのノウハウをすべてつぎ込んだこのヒルトップ・システムを使えば、入社半年の社員でも簡単にプログラムを組める。どれほど複雑な製品でも、デジタル情報さえあれば簡単に製造が可能だという。昼間にプログラムを設定し機械に材料をセットしておけば、機械は24時間無人で動き続ける。

 「工作機械はいわばコピー機などと一緒で出力装置に過ぎない。ルーティーン作業は工作機械が一手に担う。そうすることで、主役である人は開発や企画、設計など創造的な仕事に専念できる」(山本副社長)。

 これまで磨き上げてきたヒルトップ・システムを活用することで、「リピート注文なら最短3日で納品」を実現している。

 Foo’s Labは試作開発の場で、外国人2人を含む6人が働く。工作機械やツールをそろえ、まだ世に出ていないアイデアを製品化していく。3Dプリンタも一角に設置されていた。

 1階はマシニングセンタ10台などがフル稼働中だった。「通常の5軸マシニングセンタの刃物は40~50本。ここには40パレット・刃物320本の特別仕様の加工機がある。同一機を置かず、それぞれに特長を持たせている」(宮浜副部長)。加工機の担当者はわずか数人。検査室の人員はパートを含め10人体制という。

 1階の一角にはアルマイト処理設備が置かれ、アルマイト処理(白アルマイト、黒アルマイト、テクノマイト、硬質アルマイト、硬質黒アルマイト)を内製化している。「アルマイト処理は以前、外注していた。高品質かつ短納期のため、新社屋竣工を機に内製化した」(津ケ谷氏)。

 2階に据え付けてあるのは3軸加工機5台、複合加工機1台など。ここでは約30人で自動化が難しい主に後工程を担当している。

 スーパーゼネコンの依頼で「無人搬送車(AGV)」(横幅600×長さ500×高さ300ミリ、最高速度3・6キロ/h、最大積載100キログラム)を1億円で開発済み。AGVにロボットを取り付け材料セットまで自動化する計画(SFT,Smart Factory Transporter)が現在、進行中。

 「ものづくりのシェアリングの観点から補助金を活用し、アルミワイヤメーカー1社と生産体制の相互提携を始めている。この30年、人を育て、企業体質を変えることに注力してきた。これからもヒルトップらしい業容拡充に努めたい」(山本副社長)

© 株式会社鉄鋼新聞社