東海地区の鋼材流通・加工業でも、IoTやAIの活用拡大が関心を集めている。事務の生産性向上や顧客も含めた電子ネットワーク化の拡大という側面もあるが、事務職や現場職の人手不足で業務の効率化を進めねばならない、という厳しい事情もある。大手ユーザー筋で進みつつあるこうした動きに、逆にコストアップ要因が増えると心配する声もある。
地区の自動車関連をはじめとするユーザー筋では、事務職の生産性向上を進める動きが拡大している。生産現場で展開してきた効率化の手法を事務部門にも導入し、全社での生産性向上につなげようというものだ。
その背景には、人手不足の深刻化という現実的な側面もある。モノづくりの集積地である当地区では、スタッフの人手不足が部品などの安定供給に支障をきたしつつあるほどだ。さまざまな手を使って人材募集をかけるが、ほとんど集まらない。
業務の内容・品質、納期面での対応などは従来以上のものが要求されるため、結果的にIT化を進めて事務作業をできるだけなくしていこうとする取り組みになる。
例えば、電子請求システムや電子決済の推進などがある。単に請求書などを電子データで送信するだけでなく、ユーザーのさまざまな合理化策に対応するかたちで、コイルセンターや鋼材問屋が対応するケースが増えてきた。
また、ビッグデータを活用し、システム統合や全体の生産性向上につなげようという各社での生産現場のIoT化が、SCM(サプライチェーンマネジメント)の中により深くつながり、系列を超えてサプライチェーンが一元化していく方向性が見えつつある。
これまでは自社の生産性向上のために行ってきたセンサーによる自動運転、自動検査工程などがPLC(シーケンサ。プログラムに従って制御を行うコントローラ)の共通化などに伴って需要家などのシステムと統合する可能性さえ指摘する声がある。
こうした流れが、コンピュータの進化に伴って具体化すれば、事務や営業の仕事の仕方も大きく変わっていくことになりそうだ。