エシカル消費の内実を問う最新動向 ~海外産品、大豆、バナナ~ サステナビリティ 新潮流に学ぶ

画像:JWCS提供

持続可能な消費・生産(SDGsゴール12)をめぐって、一進一退、正負せめぎ合いの状況が続いています。エジプトで開催された生物多様性条約会議(COP14、11月中・下旬)では、企業投資が生物多様性の保全に寄与する重要性が強調されました(会議テーマ「人間と地球のための生物多様性への投資」)。

日本の経団連でも、COP14直前の10月に生物多様性宣言・行動指針の改定を行い、とくに企業がSDGsを意識して貢献することに期待を寄せています。とくに農産品や天然資源などは海外に多く依存している日本ですので、そのサプライチェーンでの影響は無視

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木材、農産品、水産物、鉱物、野生生物製品(ペットを含む)などの具体例について、問題点を指摘するとともに、フェアトレードや調達基準、認証制度など問題解決に向けた取り組みを紹介しています。

問題把握のみならず問題克服の取り組みとして、コウノトリを育むお米(豊岡市)や絶滅危惧種の保全に資するコーヒー、紅茶、カカオ、バナナなどがあり、視覚に訴えるポスター「エシカルコンシューマ―になろう」が、東京デザイン専門学校の学生さんの協力で作成されていています。

この分野に関しては、すでに多様な試みが展開されており、いろいろ話題が尽きないテーマなのですが、現実問題としては極めて厳しい状況も山積しているのが実態です。(関連コラム:第16回第19回、参照)

次に、最近の深刻な話題を2事例ほど紹介することにします。

「3カ国民衆会議」で問題視された大豆

11月下旬、モザンビーク、ブラジルの小農・女性・先住民族・市民社会組織の方々が来日し、「3カ国民衆会議」が開催されました(11月20~22日、聖心女子大学ほか)。グローバルな大規模農業開発が、自然生態系と地域の小農民の生活を破壊する事態を憂慮した市民連帯の動きです。

ブラジルでは、1970年代から広大なセラード地域の農業開発が進められ、不毛の大地を穀倉地帯に変えた奇跡の開発として、日本のODA(政府開発援助)の成果の一つとして称賛されました。しかし、巨額の投資と開発によって生物多様性の宝庫とされる地域の破壊、その地に生活してきた先住民や小農民からの土地収奪が起きてきた実態があったのです。

開発の負の側面が軽視され、メリットのみが宣伝されてきたことへの批判と抵抗が火を噴き、今回の民衆会議に至ったと言ってよいでしょう。深刻な状況が詳細に報告されましたが、その一例が、日本も多く輸入している主要な生産品の大豆に関するものでした。農薬の多用による水系汚染、遺伝子組み換え大豆の導入が広がり(モノカルチャー化)、抵抗運動への弾圧もあって地域社会は危機に瀕している状況が報告されました。

それに類似する事態が、現在アフリカのモザンビークで進められている「プロサバンナ」開発事業です。セラード農業開発のような大規模開発が、日本とブラジルの協力の下で進められており、セラード開発と同様の事態が起きているとして、現地モザンビークの住民から批判と反対の声が上がり、3カ国民衆会議となったのでした。

バナナでも同様の事態が・・・

実は似たような事例が、フィリピンのバナナ生産をめぐる動きでも起きています。かつて、1982年刊行の『バナナと日本人』(鶴見良行著、岩波新書)によって、フィリピンのバナナプランテーションにおける農薬散布、不公正な契約、労働問題などが明らかにされて話題をよびました。

こうした状況が現在も起きていることを、バナナ生産地のミンダナオ島の関係者が来日して訴えました(7月28・29日、エシカルバナナ・キャンペーン公開セミナー)。詳細は、同キャンペーンのサイトで紹介されており、関連ビデオ映像作品「甘いバナナの苦い現実」がアジア太平洋資料センター(PARC)によって最近作成されましたので、ご覧頂きたいと思います。

いずれにしても、今日の私たちはグローバルなサプライチェーンの先にある生産現場で起きている事態に目をそらすことはできません。こうした問題は、最近の「ビジネスと人権」をめぐる世界動向とも関係しており、機会を改めてまた報告したいと思います。

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