台湾の統一地方選挙で与党民進党が敗北、蔡英文総統は党首を辞任。今後の影響は?

11月24日、台湾で統一地方選挙が行われ、与党の民主進歩党(民進党)が大敗しました。今回のこの記事では統一地方選の意義について簡単に解説したいと思います。

与党民進党の大敗と台湾トップの辞任

与党民進党は、選挙前に22県・市のうち13の首長を確保していましたが、今回の選挙の結果、半分以下の6にまで減らしました。一方で野党国民党は、首長ポストを6から15に倍増させました。台湾行政トップである蔡英文総統は責任をとって民進党の党首を辞任しました。

民進党敗北の要因は?鍵は「蔡総統の支持率低迷」

今回の民進党の敗北の要因は蔡総統の支持率低迷にあります。今回の統一地方選は2016年に発足した蔡政権の中間評価という位置づけですが、2018年の蔡総統の支持率は30%台と低迷していました。就任当初の70%と比べて半分以下に落ち込んだことになります。

蔡総統の支持率低迷の要因は大きく内政と外交に分かれます。内政では、年金改革を断行して、公務員や教員、軍人に対する優遇の是正を目指しました。しかし、この改革は当然公務員や教員、軍人から強い反発を受けました。また、この改革は消費に悪影響を与えたことも指摘されています。また、そもそも若者の低賃金という構造的な問題が指摘されており、改革に不満を持つ若者の支持の離反も指摘されています。一方で、低所得者に対する減税を含んだ税制改革も行いましたが、支持には結び付きませんでした。

一方で、外交では、中国や与党民進党との関係から厳しい対応を迫られました。中国は、中国と台湾は一つの国家という「一つの中国」原則を自明なものとして考えています。しかし、民進党内に台湾独立派を含んでいることもあり、蔡政権はこの原則を明確に認めてきませんでした。そのことに反発した中国は、台湾と外交関係を有する国々に圧力を強めました。その結果、この2年で台湾は5か国との外交関係を失っていたのです。それと同時に中国との経済関係も悪化した結果、経済界から突き上げを受けました。一方で、明確に台湾独立を訴える主張を展開しない政権に対して、従来の独立派は不信感を持つようになったのです。

2020年総統選の前哨戦としての性格も

今回の統一地方選は全22県市の首長や議員を一斉に選出するため、2020年に行われる台湾で最も大事な政治イベントである総統選の前哨戦と位置づけられていました。今回野党・国民党が圧勝しましたが、その結果として国民党は総統選に向けて勢いを得たことになります。

中台関係、米中関係への影響はいかに

今回の選挙結果で見逃せないのが、中台関係、米中関係への影響です。蔡政権の対中政策に不満を抱いていた中国政府からすれば、親中姿勢の野党・国民党の勝利は歓迎すべきことです。これを機に中国が台湾に対して積極的なアプローチを展開することが想定されます。中国政府はすでに台湾市民の親中姿勢を高めるべく様々な政策を展開しています。これに応えるように、すでに民進党の地盤である高雄市長選で当選した国民党の政治家は、中台関係を強める部署を設立することを訴えています。
一方で、近年アメリカは、対中感情の悪化もあり、与野党を問わず親台湾の姿勢を強めています。2018年には、外交関係を有さない台湾において事実上大使館の機能を果たす米国在台協会台北事務所の新庁舎をオープンしたり、台湾に対して370億円あまりの武器を売却したりしています。今回の台湾統一地方選挙で野党・国民党が勝利した結果、まわりまわって米中関係の悪化にもつながりかねないのです。

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