金属行人(11月29日付)

 生来の明るい性格で誰の懐にも入り込み、年齢や立場で分け隔てせず、けれんみのない開放的な人柄と柔和な笑顔でいつも場の雰囲気を和ます▼新潟の老舗鋼材加工流通大手、藤田金屬の経営を25年間にわたってかじ取りし、現役社長のまま今年9月25日に帰らぬ人となった故今井幹文氏(享年67歳)。病判明から半年余。闘病も、復帰かなわず。過日のお別れ会には、故人を慕う多くの関係者が新潟を訪れ、献花し、早過ぎた旅立ちを悼んだ▼企業経営者としての手腕は言うに及ばず。実直かつ何事にも真剣で、それでいて穏やかで決して敵をつくらないニュートラルさ故に、新潟県鉄鋼販売業連合会や全国コイルセンター工業組合など所属団体の要職に推されること多々。鉄鋼関連だけでなく新潟経済同友会の代表幹事も歴任するなど地元経済界のご意見番として存在感を発揮した▼そんな類いまれな有徳の人でありながら本人は偉ぶらず、いつも課題を見つけては解決に向けた挑戦心に満ちあふれていた。そうした真摯な姿勢を誰もが理解していたからだろう、さまざまな場にその存在があり、いつのまにか氏を中心に輪ができた。人を引きつける魅力を持っていた▼筆者にとっては年の離れた「兄貴」であり、改めて感謝とともにご冥福をお祈りしたい。

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